第1回:もう一つの危機的事態
災害は忘れたころにやってくる
BCP策定/気候リスク管理アドバイザー、 文筆家
昆 正和
昆 正和
企業のBCP策定/気候リスク対応と対策に関するアドバイス、講演・執筆活動に従事。日本リスクコミュニケーション協会理事。著書に『今のままでは命と会社を守れない! あなたが作る等身大のBCP 』(日刊工業新聞社)、『リーダーのためのレジリエンス11の鉄則』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『山のリスクセンスを磨く本 遭難の最大の原因はアナタ自身 (ヤマケイ新書)』(山と渓谷社)など全14冊。趣味は登山と読書。・[筆者のnote] https://note.com/b76rmxiicg/・[連絡先] https://ssl.form-mailer.jp/fms/a74afc5f726983 (フォームメーラー)
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■実行が伴わなければ意味がない
「BCP(事業継続計画)」という言葉は、今やビジネスの世界では「防災・減災」と同じくらいに一般用語として定着している。一昔前なら、初めて会う人にBCPのことをあれこれ説明するのは少し億劫に感じたものだが、今ではBCPと口にしただけで「ああ、BCPね」とすぐにあいづちを打ってくれる人が増えた。
しかしこの言葉が広く普及しているからと言って、BCPそのものが企業に広く根付いているとは限らない。筆者の経験から言えば、とくに中小企業の場合、BCPという言葉は知っていても、それを積極的に自社の経営に組み込んで万一に備えているという会社は決して多くはない。
理由はいろいろあるだろうけど、やはり一番気がかりで取り組むべき優先順位が高いのは、日々の経営課題だろう。スムーズな資金繰り、安定した収益、労働力不足の解消などなど…。目の前にこうした課題が山積していたら、BCPなど後回しになるのは無理もない。
内閣府の統計によれば今日、大企業の6割強、中堅企業の5割弱がBCPを策定もしくは策定中だという。こうした数字を見る限り、日本には災害に強い企業が増えつつあるような印象を受けるが、中小企業にBCPが広く普及しない限り、楽観はできない。大企業を支えている取引先の大半は、その裾野に広がる圧倒的多数の中小企業だからである。カタストロフィックな災害が起こったとき、大企業や中堅企業だけが自己完結的にBCPを運用しても、どこまで事業への影響を回避できるかは不透明だ。
したがって中小企業に対し、これからも継続的にBCPの必要性を訴えていくことは十分に意義のあることと考える。再びBCPの連載を始めようと思い立ったのも、そんな思いからである。
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