2019/03/07
昆正和のBCP研究室
■災害に興味がない人が増えている!?
ところで2018年の夏の終わり、通信プロバイダー大手のBIGLOBEがユーザーを対象に「災害に関する意識調査」というアンケートを実施したが、筆者はこのアンケート結果に次のような少し気がかりな所見があることに気づいた。
回答者の過半数が「過去に起きた災害を忘れてしまう」と答えているのである。なるほど、近年はあちこちで大規模災害が多発しているから、これらをいちいち覚えていたり気にかけていたら神経が参ってしまうよということなのかもしれない。この「忘れてしまう」という回答に、早く忘れてしまいたいという意思のようなものを感じるのは筆者だけだろうか。
おまけに20代男性の4人に1人が「過去の災害には興味がない」と回答している。少し厳しい見方をすれば、こうした姿勢は「過去の災害を見て見ぬふりをする、災害の教訓を今後に生かそうとは思わない」と答えているのと変わりはない。
8年前の東日本大震災の後、「この未曾有の大災害を"過去のこと"にしてはいけない。また明日にも起こるかもしれない次の災害への備えを万全にしよう」といった声があちこちからあがったものだ。当時に比べ、今日の冷めた姿勢には大きな隔たりがあることは否めない。
思うにこうしたネガティブな意見は、必ずしもアンケート回答者個人に帰して済むことでもなさそうだ。私たち一人ひとりの心のどこかに、やはり災害を「過去の出来事」や「対岸の火事」として早く忘れたい、見て見ぬふりをしたいという気持ちがあるのではないか。もしそうだとすれば、災害に対して後ろ向きの空気を作り出してしまう何かが、この社会の中にあるのかもしれない。
- keyword
- BCP
昆正和のBCP研究室の他の記事
おすすめ記事
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/19
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/11/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方