観客の入場待機列付近で爆発があった設定で実施

東京都は29日、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けたテロ対策実地訓練を調布市の味の素スタジアム(大会期間中の名称は東京スタジアム)で実施した。大会組織委員会や警視庁、東京消防庁、調布市のほか国からは内閣官房の関係者も訪れ、総勢約500人が参加した。3月に都が定めた大会期間中の対処要領に基づき関係機関が一堂に会し実地訓練を行うのは初の試みで、爆発物処理や負傷者救助などを実施した。

東京消防庁によるトリアージ訓練

訓練ではスタジアム北側の広場の、観客が待機列を作っているそばのテントで爆発があったと想定。近くの警察官のほか、救護所としての機能も有する特殊救急車も含めた東京消防庁の部隊が駆けつけ、トリアージや搬送を実施。無傷と判断された観客は南側の別の広場に移動させた。

警視庁による被疑者取り押さえの様子

会場近くの防犯カメラから被疑者を特定し、スタジアムのメインゲート前でその2人組を警視庁機動隊銃器対策部隊と警察犬で制圧。被疑者がさらに爆発物らしきかばんを持っていたことから、警視庁の爆発物処理班がロボットで慎重に広い場所に運んだ後、約30kgの防護服を着た警察官がマジックハンドで爆発物処理筒にかばんを入れ、訓練は終了した。

防護服を着た爆発物処理班の警察官が処理筒に爆発物らしきかばんをマジックハンドで入れる

都では(1)治安対策(2)サイバーセキュリティ(3)災害対策(4)感染症対策ーの4つの視点からの大会期間中の対処要領を3月にまとめた。この対処要領に従い図上訓練をほかの機関とも行ってきたが、大会の関係機関が一堂に会した実地訓練は今回が初めてだという。

同スタジアムでは五輪のサッカー、近代五種、7人制ラグビーが開催されるほか、2019年ラグビーワールドカップの会場にもなっている。訓練後の講評で都の猪熊純子副知事は「今回の訓練の成果を対処要領のブラッシュアップに役立てたい。また、今回の訓練のほかにラグビーワールドカップでの知見を五輪につなげたい」と述べた。都などでは来年度以降も同様の実地訓練を他会場でも実施していく方針としている。

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(了)

リスク対策.com:斯波 祐介