主に米・英・豪のBCPがある組織から回答が寄せられた(出典:写真AC)

BCMへの取組状況やBCPを作成したかどうかなどを調査した報告書はこれまで多数見てきたが、BCPを発動した後に関するアンケート調査はあまり多くないように思う。本稿ではそのような調査結果の一例として、BCMを中心とした情報サイト「Continuity Central」(https://www.continuitycentral.com/)が実施したアンケート調査の結果を紹介する。

アンケート調査はWebサイトにて行われ、米国および英国からの回答者がそれぞれ34% 、オーストラリアからの回答が8%あったとの事である。なお全ての回答は、既にBCPが作成されている組織に所属している人からの回答である(注 1)。

まず「過去12カ月間にBCPを発動(activate)しましたか?」という設問に対する回答結果は図1の通りであり、1年間にBCPを複数回発動した組織が4割以上あることがわかる。日本ではBCPというと大規模な災害などが主な対象と考えられる場合が多いため、そのようにお考えの方々から見ると意外かもしれないが、これは欧米においてBCPが必ずしも大規模災害への対応だけを念頭においたものではなく、停電や情報システムのトラブル、サプライヤーでの事業中断といった比較的軽微な事象もBCPの対象となっているからであろう。

図1. 過去12カ月間に BCP を発動した回数(出所)Continuity Central の記事「Business continuity plan performance: survey results」における記述をもとに筆者作成

なお「あなたの組織における BCP の発動回数は増加していますか?それとも減少していますか?」という設問に対しては、60%が従来と変わらないと答えている一方で、32%は増加していると回答している。

次に「直近のBCP発動時にBCPは期待通り役に立ちましたか?」という設問に対する回答結果は図2の通りであり、BCPが実際に役に立っている様子がうかがえる。前述のとおり実際にBCPに基づいて対処することをある程度経験し、その結果を踏まえて見直しがかけられた結果、組織の実態に合うようにBCPの調整が進んできた結果なのではないかと推測される。ちなみに回答者の73.5%が直近の BCP発動後にBCPを修正したと回答している。

図2. BCP が実際に役に立ったかどうか(出所)Continuity Central の記事「Business continuity plan performance: survey results」における記述をもとに筆者作成

また「直近のBCP発動後に反省会(debrief)を実施しましたか?」という設問に対しては75.5%が実施したと回答している(注2)。さらに、自由記述式の「インシデント対応後の反省会を実施するうえで最も効果的なのはどのような方法だと思いますか?」という設問については、回答された文面が全てPDFファイルで公開されている。回答は全部で63件あるが、できるだけ早い時期に簡易的な反省会(概ね「hot debrief」または「hot wash」と表現されている)を行うべきだという趣旨の回答が9件あった。またこれらとは別に、出来るだけ早く簡易的な反省会を行い、後から正式な反省会を行うという回答が9件あった。他にもBCMの実践者からの様々なコメントが集められていて興味深い。

これまで日本で災害が発生するたびに「BCPが機能しなかった」というような趣旨の報道が多数あったが、本稿で紹介したように実際にBCPが役に立っている例は多数ある。欧米におけるBCPの作り方やBCMへの取り組み方に学ぶべきことはまだまだ多いのではないかと思わせる調査結果である。

■ 調査結果が紹介されている記事の掲載場所(Webページのみ)
https://www.continuitycentral.com/index.php/news/business-continuity-news/3364-business-continuity-plan-performance-survey-results

注1)この調査では最初に「あなたの会社はBCPを持っていますか?」という設問があり、BCPを作成していない組織からの回答を排除している。

注2)ISO 22398(演習の指針)がJIS化された際にdebriefの訳語として「反省会」があてられているので、それに準拠した。

(了)