【ラスベガス時事】米ネバダ州ラスベガスで開かれている家電・IT見本市「CES」では、トランプ次期米大統領の就任を20日に控え、参加企業から影響を見極めたいとの発言が相次いだ。電気自動車(EV)に逆風となる規制変更や、中国などに対する関税引き上げをはじめ、次期政権が進めるとみられる政策が注視されている。
 ◇生産、柔軟に調整
 ホンダは新たに北米に投入するEVブランドの試作車を披露。ただ、次期政権はEVの普及を促してきた排ガス規制の緩和などを進める可能性があり、貝原典也副社長は「EV生産の時期や量については柔軟に対応していく」と語る。EV需要が想定通り伸びない場合、市場への供給を遅らせる構えだ。
 ソニーグループとホンダが共同出資するソニー・ホンダモビリティは、第1弾となるEVの予約を米カリフォルニア州在住者を対象に開始した。川西泉社長は、トランプ政権発足がEV市場の重荷になるとの見方に関し、「一喜一憂するというよりは自分たちの本質を提供することが大事だ」とぶれない姿勢を強調。一方、「もともと販売台数を追わないと決めている」と、売れ行きを慎重に見積もっていることもうかがわせた。
 ◇テック市場を圧迫
 トランプ氏が表明している中国への10%、メキシコとカナダへの25%の関税にも懸念が高まる。CESの主催団体は、パソコンなど消費者向けテクノロジー業界の米市場規模が2025年に前年比3.2%増の5370億ドル(約85兆円)に拡大すると発表したが、次期政権の関税政策で最大1430億ドル(約23兆円)下押しされる恐れもあると明らかにした。
 CESで基調講演したパナソニックホールディングスの楠見雄規社長は、記者団に対し、傘下の電池事業会社が北米での材料調達を増やそうとカナダ企業と協力していることに言及。「いきなりカナダに関税をかけるのかと衝撃を受け、リスクを感じる」と驚きをあらわにした。
 CESには関税引き上げで最も打撃を受けるとみられる中国企業も多く参加。高級EVメーカー「ジーカー」は3車種を展示した。担当者は米市場への参入について「政治環境が厳しく、具体的な計画はない」と述べたが、マーケティング部門を米国内に開設済みといい、「トランプ後」を見据えていた。 
〔写真説明〕ホンダが新たに北米に投入する電気自動車(EV)ブランドの試作車=7日、米ネバダ州ラスベガス
〔写真説明〕中国の高級電気自動車(EV)メーカー「ジーカー」が出展したEV=7日、米ネバダ州ラスベガス

(ニュース提供元:時事通信社)