効果と関係なしに外せなくなったマスク
第74回:ルール至上主義の弊害(3)

多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
2024/10/31
再考・日本の危機管理-いま何が課題か
多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
コロナ禍で緊急事態宣言が発令されたことは記憶に新しい。当時の混乱は「明日はニューヨークになる」「何もしなければ国民の〇〇人が死亡する」などの恐怖が喧伝され、東京都知事が「ロックダウン」に言及するなど混乱に拍車をかけていた。
その当時の情報環境は酷い状況であった。異論を発するYouTuberが童謡チューリップの歌詞になぞらえて『最多!最多!…並んだ!超えた!‥』とマスメディアの煽り報道を風刺し批判するほど、恐怖煽り一色にマスメディアは染まっていて異論を許さない状態であった。実際に異論を発する言論に対して、極めて厳しい統制がなされていたのは事実であり、その風潮に社会全体が乗っかり、異論者への攻撃は言葉で表せないほど厳しいものであった。
確かに緊急事態において、情報の統制は必要不可欠である。ロシアのウクライナ侵攻当初、短期間で全土制覇できる見込みと言われつつ、現実はそう簡単ではなかった。そのロシアの侵攻を食い止めた大きな要因は、インフラも含めた情報基盤の確立であったとされている。つまり混乱する危機状態において、情報はそれほど重要なのだ。
その観点でいうなら、コロナ禍の緊急事態においても、一定の情報統制は必要だったのは間違いない。しかしそれは事後に総括し検証して是正が図れることが前提であり、事後検証の厳しさが行き過ぎの危険性を担保するのである。それがなされず、その機運も高まらないことが日本の抱える問題点だろう。
当時ほど異論に対する攻撃性はないとはいえ、マスメディア等の情報環境はいまだ異論はタブー視し、報道しない自由が発動されており、本質は何も変わっていない。
その結果、情報に対する姿勢で分断構造が生まれている。自分自身で思考し、自己責任の前提を認識した判断で活動できる行動原理を持つ人と、一色に染まっている受動的情報をいまだに疑うことなく、その情報環境にのっとって策定されたルールの本来の目的に見向きすることもなく、思考停止状態で文字面を追いかけて唯々諾々と従う人との差が拡大しているのである。
実際、今現在においても強迫観念に駆られて抜け出せないままの人も少なくないように感じるのは筆者だけではあるまい。
これらの現象の具体例をいくつか紹介して、皆さん個々人での思考を働かせていただきたいと考えている。
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