【カイロ時事】イスラエル軍がレバノン南部に地上侵攻して30日で1カ月。イスラエルはレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラに壊滅的な打撃を与えるため、地上作戦と並行して空爆を激化させる。ヒズボラは徹底抗戦を続けるものの、弱体化は否めない。こうした中、米国が仲介する停戦交渉が進んでいるとも報じられている。
 「限定的な急襲作戦を開始した」。イスラエル軍は10月1日未明、地上侵攻に踏み切った数時間後にこう発表した。部隊を追加投入し、戦闘地域を拡大。軍報道官は、ヒズボラのロケット弾攻撃で避難を強いられるイスラエル北部の住民を安全に帰還させるため、「ヒズボラを国境から遠ざけ、軍事力を解体する」と強調した。
 国境地帯では地下トンネルや隠されていた武器を発見し、接近戦で戦闘員を多数殺害した。最高指導者ナスララ師に続き、後継者と目されていたサフィエディン師も殺害。ハレビ軍参謀総長はヒズボラ上層部の指揮系統を解体したと指摘し、米シンクタンク戦争研究所も「(イスラエル軍が)ヒズボラの能力を破壊し、混乱させることに成功している」との見方を示す。
 ヒズボラはロケット弾やドローン攻撃のペースを維持し、イスラエルの重要拠点に実害を与えている。ただ、幹部を立て続けに失った痛手は大きいもようだ。
 イスラエルのメディアは29日、米国とイスラエル、レバノンが協議する停戦案が近く進展する可能性があると報じた。停戦案には、ヒズボラが対イスラエル国境の北方約30キロを流れるリタニ川以北に撤退することや、停戦監視を担ってきた国連レバノン暫定軍(UNIFIL)の強化などが含まれる。
 イスラエルと米国は、ヒズボラが停戦を破れば、イスラエルが軍事作戦を行うことで合意したという。ただ、ヒズボラの国境地帯からの撤退など同様の措置は過去にも取られたことがあり、合意に達しても停戦の実効性は見通せない。 
〔写真説明〕29日、レバノン南部で、イスラエル軍の空爆を受けて立ち上る煙(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)