【ワシントン時事】世界銀行がグループ内で最貧国支援を担う国際開発協会(IDA)の大幅増資を計画する背景には、世界の貧困削減ペースが足踏みしていることへの危機感がある。世銀は国連の持続可能な開発目標(SDGs)で掲げた2030年までの「極度の貧困」撲滅は未達になるとの見通しを示しており、国際社会に改めて支援強化を訴えている。
 世銀のバン・トロッツェンバーグ上級専務理事はインタビューで、「より良い未来があるという希望を生み出すような対応を講じる」と強調。増資で資金を確保し、最貧国の雇用や教育、保健福祉に投資する重要性を訴えた。
 世銀は15日、世界で1日2.15ドル(約330円)を下回る「極度の貧困」状態で生活する人の割合は24年に8.5%になるとの報告書を発表。中国やインドの経済発展を背景に1990年の38%からは大きく減ったものの、30年は7.3%にとどまるとの試算を示した。
 背景にあるのは、コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻による食料不足などが重なる「複合危機」。貧困が集中するアフリカのサハラ砂漠以南などでは回復が遅れ、「極度の貧困」の割合がコロナ禍前を上回ったままだ。
 小規模な島しょ国では、海面上昇や自然災害の頻発にさらされるなど、気候変動問題も影を落としている。世銀はこうした国が非常時に債務返済を一時停止できる制度を持っており、バン・トロッツェンバーグ氏は「他の債権国も同様の対応を取れば、世銀と連携した支援が可能になる」と述べ、協力を呼び掛けた。 
〔写真説明〕世界銀行本部=米ワシントン(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)