BCMに挑む

奥地建産(本社:大阪府松原市)

奥地建産株式会社(本社:大阪府松原市)は、本社および三重工場、大阪事務所で事業継続マネジメントシステム(BCMS)の国際的な規格である「BS25999-2:2007」の認証をビューローベリタスジャパン株式会社から取得した。同社は、2009 年7月に中国・九州で発生した豪雨災害で、取引先の大手住宅メーカーからリスクマネジメントへの取り組みの要請があったことからBCMSの構築を進めてきた。

写真を拡大奥地建産の主力製造品「太陽光発電パネルを固定するための架台」

奥地建産は、プレハブ住宅の鋼製建材や太陽光発電パネルの架台など特殊製品の開発・製造を手掛ける建築資材会社。現在は土木分野にも事業を拡大しているが、主な顧客は大手住宅メーカー。他の資材会社では作ることが難しい製品も数多く手掛けている。

BCMSの取得準備を始めたのは2009 年の秋。きっかけは、同じ年の7月に中国・九州北部地区で発生した豪雨災害。この豪雨で取引先の大手住宅メーカーの工場が被災し、近くにあった大手住宅メーカーの関連会社も生産設備が水没するなどの被害を受け、1カ月間の操業停止に追い込まれた。

大手住宅メーカーでは、豪雨災害後、協力会社各社に対して「製品や技術の供給がストップしてしまうと事業に大きな影響が出るので、リスクマネジメントに取り組んで欲しい」と事業継続体制の強化を要請。そこで、同社では、リスクマネジメントへの取り組みを具体的に示せるものとしてBCMS構築を決めた。

同社には、古くから納期遅れや欠品は絶対に許されないという社風があった。また、ここ数年、インフルエンザ対策として従業員に予防接種を受けさせるなど、危機管理に対する意識が社内および社員に浸透していたこともあり「BCMS構築についてトップの決断や社員の協力はスピーディーだった」と品質保証部の馬渕義弘部長は振り返る。

しかし、いざ実際に準備を始めると様々な問題に直面したという。特に、参考にできる他社の事例がない中で「我が社のような中小企業がどこまでやるのか」(馬渕氏)については悩んだという。

苦難の末に作り上げたBCMSは、取引先企業から高い評価を得た。大手住宅メーカーが懸念していた有事のときの初動体制については「非常に安心してもらえた」(馬渕氏)と話す。

写真を拡大品質保証部 部長馬渕義弘氏

BCMSを作り上げるプロセスでは、リスクアセスメントや事業インパクト分析により、何が危機なのか、その危機によってどれぐらいの障害が起こるのかが明らかになり、こうした情報を従業員が共有できるようになったとする。BS25999の審査時には、社内でそれまで十分認識できていなかった「本当は何が必要なのか?」という迷いや方向性も審査員の指摘により改めて認識できたという。

もう1つ、馬渕氏はBCMS構築のメリットとして「我が社のコアコンピタンス(競合他社に真似できない核となる能力)」が明確になったことを挙げる。取引先からの要請の内容などを精査する過程の中「何が評価されているか」「何が心臓部なのか」が明らかになってきた。

BCMSは、事故や災害を対象としているだけに、形骸化しやすい性格を持つ。立派な事業継続計画が策定されていてもそれが企業文化として浸透していないと継続的な運用に結びつかない。そのため、馬渕氏は「繰り返し演習し、改善を行い、従業員の意識と行動が変わるところまでもっていきたい」と話している。