4.安全管理システム導入の効果
安全管理システムを導入することによる主な効果として以下の点が期待できる。

(1)体系的な取組の推進
・PDCAサイクルによる継続的な取組の推進
・末端従業員までの安全活動の浸透
・安全意識の高揚、安全文化の浸透・醸成

(2)改善点やベストプラクティスの共有
・事業所間での相互アセスメント実施による好事例の共有や改善点の水平展開
・ノウハウ・技術の体系的な蓄積
・技術伝承

(3)マネジメントのツールとしての活用
・安全管理システムに基づく活動を通じたマネジャー層の意識改革
・現行の仕事のやり方や仕組みの合理化を推進するためのトリガー

おわりに
今回の報告書で災害防止のための多くの課題が指摘されているが、本稿ではその課題への対策実行のための有効な取り組みとして安全管理システムを紹介した。安全管理システムは、日本の多くの企業で導入されている品質や環境のマネジメントシステムと同様のコンセプトにより重大事故防止を目的としたものである。防災活動は、どの企業においても事業上の必須事項として実施されていることに疑いはないが、それら個々の活動が有機的に結びつかないままであったり、長年の間にルーチン業務化してしまい最大の効果が発揮できていないケースも見受けられる。安全管理システムは、従来の各種安全活動を個別の活動として実施するのではなく、重大事故を防止するという大方針達成のために、各種活動を機能的に結び付ける仕組みである。形容するならば、各種活動・取組を一つの体系に整理しシステムを構築することにより、大きな幹を作り、その幹を基盤とする各種活動を実施し、改善を繰り返すことで幹を成長させていく活動である。保安推進に特効薬はなく、日頃の地道な活動の積み重ねが結果として無事故につながるものであるが、安全管理システムの導入はこの地道な活動の足跡を残すためのツールとしても有効であり、技術伝承、ノウハウ・知識の共有、安全文化の醸成、意識改革などの諸課題への対応も同時に実現できることになる。今回の報告書では、取組むべき課題として第三者機関を活用したレビューや評価も推奨されている。弊社でも安全管理システムの構築支援、リスクアセスメントにおける影響評価、組織における安全文化の意識調査など、各種支援ツールを用意しているので防災活動の中でお困りの点などがあれば、是非一声かけていただきたい。

<参考文献>
石油コンビナート等における災害防止対策検討関係省庁連絡会議報告書(平成26年5月16日内閣官房、 総務省消防庁、厚生労働省、経済産業省)
安全管理システムの解説とリスクアセスメントの実際(平成18年1月)高圧ガス保安協会
Guidelines on a Major Accident Prevention Policy and Safety Management System, as required by Council Directive 96/82/EC (SEVESOⅡ), Institute for Systems Informatics and Safety

                      [2014年6月発行]

【お問い合せ先】
(株)インターリスク総研 災害リスクマネジメント部
TEL.03-5296-8947
http://www.irric.co.jp/

転載元:株式会社インターリスク総研 InterRisk Report No.14_015
インターリスク総研