安全管理システム(Safety Management System)のポイント

インターリスクレポートより  災害リスク情報<第57号>

執筆 災害リスクマネジメント部
リスクエンジニアリンググループマネジャー・上席コンサルタント 吉村伸啓

1.はじめに
5月16日、内閣官房、総務省消防庁、経済産業省、厚生労働省の4者連名により「石油コンビナート等における災害防止対策の推進について」と題し、重大事故の発生防止に向けて事業者や業界団体、国や地方公共団体等の関係機関が取り組むべき事項等について報告書が取りまとめられ、関係業界団体及び都道府県に要請された。

これは、近年増加傾向にある石油コンビナート施設や危険物施設、高圧ガス施設等での事故に関してその背景を分析し、企業、事業所及び関連各機関でとるべき対策について考察するため、内閣官房が主導となり、総務省消防庁、経済産業省、厚生労働省が参加して今年2月に設置された「石油コンビナート等における災害対策検討関係省庁連絡会議」にて取りまとめられたものである。

しかし、報告書の中で触れられている災害の背景や取組むべき課題については石油コンビナート等の事業所に限らず、危険物を取り扱う他の多くの製造事業所でも参考になる事項が多く盛り込まれている。

本稿では、本報告書の内容から特に企業、事業所で今後講ずべき対策を中心に概説するとともに、その具体的な対策を組織内に定着させるための取り組み手法「安全管理システム(Safety Management System)」のポイントについて解説する。

2.報告書の内容
(1)最近の重大事故の原因・背景に関わる共通点
報告書では直近に発生した4件の重大事故に関し、その原因から以下の3点を共通する背景として挙げている(以下報告書概要から引用)。
①リスクアセスメントの内容・程度が不十分
非定常作業や緊急を想定してのリスクアセスメント、設備・運転方法の変更時のリスクアセスメントが不十分。

②人材育成、技術伝承が不十分
know-whyの不徹底による緊急時対応能力、多様な事故等を経験した人材の減少による危険を予知する能力(リスク感性)が低下。

③情報共有・伝達の不足や安全への取り組みの形骸化
過去の事故情報が十分共有されず、安全対策への反映が不十分。安全への取り組みが形骸化し、現場保安力が低下。

(2)事業者や業界団体が取り組む対策
報告書では事業者や業界団体が取り組む課題として以下を挙げている。
①事業者が取り組むべき事項
a)自主保安向上に向けた安全確保体制の整備と実施
b)人材育成の徹底
c)リスクアセスメントの徹底
d)社内外の知見の活用

②業界団体が取り組むべき事項
a)事故情報(教訓)・安全対策の共有(業界間の積極的な連携も図る)
b)教育訓練の支援
c)安全意識向上に向けた取り組み

上記の内容を具体的に取り組むべき課題をまとめると表1及び表2の通りとなる。