2024/09/19
防災・危機管理ニュース
【イスタンブール時事】レバノン各地で17、18両日に通信機器が一斉に爆発し、標的になったとされる同国のイスラム教シーア派組織ヒズボラは、イスラエルへ報復を宣言した。イスラエルはパレスチナ自治区ガザの戦闘から、北部のヒズボラ対処に軍事作戦の重心を移しつつある。ヒズボラと攻撃の応酬が強まり戦線が拡大すれば、イランなどを巻き込んだ中東の紛争激化に拍車が掛かりかねない。
「レバノンへのシオニスト(イスラエル)の残忍な破壊工作は、抵抗の決意を強くさせる」。ヒズボラ幹部は18日、一連の爆発後にイスラエルをけん制した。ただ、ヒズボラは連日の爆発で主要な通信手段が打撃を受け、幹部や戦闘員の意思疎通に支障が出ている可能性もある。反撃能力への影響や今後の出方は見通せない状況だ。
米ネットメディア「アクシオス」は、18日に爆発した無線機もイスラエル情報機関が事前に起爆作動の仕掛けを施し、ヒズボラに恐怖を植え付けて対イスラエル政策の転換を促すため実行されたと伝えた。
ヒズボラは昨年10月にイスラエルを奇襲したイスラム組織ハマスに呼応し、イスラエル北部やイスラエル占領地への攻撃を続けている。これに対し、イスラエルは今年7月、レバノンの首都ベイルートに空爆を加え、ヒズボラの最高幹部が死亡した。ヒズボラは約1カ月後、320発以上のロケット弾などでイスラエルに報復した。
ヒズボラの指導者ナスララ師は、ガザでの停戦実現が攻撃停止の条件だと主張する。ヒズボラがイスラエルに強気の態度を崩さない背景には、ハマスをしのぐ軍事力を持つ上、イランの全面的な支援を得ていることがある。
戦時下のイスラエルでは、ヒズボラの脅威で約6万人の住民が北部から避難したと推計される。避難生活の長期化で住民の不満が募っているとみられ、ネタニヤフ政権にとって住民帰還は急務だ。
イスラエルのガラント国防相は18日、「新たな戦争の始まりにいる」と指摘した上で、「部隊や資源、エネルギーを北部へ向ける。備えるべき相手はハマスとは異なる」と訴えた。ネタニヤフ首相も声明で「北部の住民を安全に家に戻す」と改めて強調。通信機器爆発への関与は明言も否定もせず、ヒズボラへの攻勢を緩めない決意を鮮明にした。
〔写真説明〕18日、レバノンの首都ベイルートで営まれた通信機器の爆発による死者の葬儀で演説するイスラム教シーア派組織ヒズボラ幹部(AFP時事)
(ニュース提供元:時事通信社)
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