次に同報告書に書かれていた要点は以下のようなものである。

・アルカイダ・コアは組織的に弱体化したが、インターネットやSNSなどを使いメッセージを配信するなどの広報活動が主な活動となっている。
・中東やアフリカ地域を中心に、自らアルカイダを名乗る組織、アルカイダと協力関係にあるイスラム過激派によるテロ活動が活発化している。
・今日のアルカイダ系組織にとって、インターネットやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)は生命線的な役割を果たしている。
・今日、シリアは世界中からジハーディストを引きつけるマグネット的な存在となっている。
・ホームグローンテロリズムも依然として深刻な脅威である。

今後の展開 〜国際安全保障の立場から〜

この報告書からも分かるように、世界で発生する全テロ事件の中で、イスラム過激派による事件は今後も大きなウェイトを占めるだろう。特に今日のシリア内戦は単なる国内の内戦としてだけでなく、アルカイダ系のイスラム過激派が勢力を拡大し、世界中(中東・アフリカ諸国や欧米諸国だけでなく、中国やロシア、オーストラリアからも)からその過激主義に目覚めたジハーディスト達が集結するという(シリアはある意味でジハーディストを引き寄せるマグネット的な存在になっている)、“国際安全保障上の懸念事項”となっている。

また昨今の事情も考慮すれば、ナイジェリアのボコハラムの動向や中国新疆ウイグル自治区の問題、ロシアカフカス地方のイスラム過激派の動向、エジプト・シナイ半島発祥のイスラム過激派の動向なども、単なるローカルな問題としてだけでなく、トランスナショナルに拡大するイスラム過激派のネットワークをさらに勢いづかせる恐れもある。

一方、非イスラムの過激派集団の動向についても、フィリピンのNPAやコロンビア革命軍、インドのマオイスト集団などは上記の表から多くのテロ事件を実行しているが、国内の情勢次第では今後の活動がさらに活発化し、各国内の治安が悪化することも否定できない。

注:図1~図5の情報源は以下
http://www.state.gov/j/ct/rls/crt/2013/224831.htm 

著者Profile
和田大樹(わだ・だいじゅ)
1982年4月生まれ。国際安全保障論(特に国際テロリズム、アジア・太平洋地域の安全保障)、国際政治学、国際危機管理論などが専門。清和大学と岐阜女子大学でそれぞれ講師やリサーチフェローを務める一方、東京財団やOSCで研究、コンサルティング業務に従事し、2014年5月に日本安全保障・危機管理学会(名誉会長 安倍首相)から学会奨励賞を受賞。学術誌や専門誌、各新聞や商業誌などに論文や記事を多く掲載し、企業や官庁向けに講演、アドバイス業務を行う。英語とフランス語に精通。
所属学会:日本国際政治学会、国際安全保障学会、日本防衛学会、日本国連学会など。
学歴:慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程。
Email: mrshinyuri@yahoo.co.jp