垂直軸型サボニウス方式の採用で風向きに依存せず安定した発電が可能

風向風速の変化に強い風力発電機の開発を行うチャレナジーはこのほど、アストモスエネルギーのLPガス受け入れ二次基地である金沢ターミナル(所在:石川県金沢市大野町4-ソ6)に寒冷地用の次世代マイクロ風力発電機「Type A」を設置し、北陸臨海部域での実証を開始した。スカパーJSATの衛星通信ExBirdの供与を受け、衛星通信の稼働実証などを行い、災害時の通信ネットワークの継続的な運用を目指す。 

「Type A」は、風向きに依存せず安定して発電できる垂直軸型サボニウス方式を採用した風車で、40メートル/秒の強風に耐えられる構造を持ち、摂氏マイナス10度までの低温環境下で稼働可能。アイススロー(風車に付着した氷が回転により周囲に飛び散る事象)を起こしにくい設計も備える。さらに、寒冷地のインフラ設備用に開発された特殊塗料を風車本体に採用し、極寒環境にも対応できる。

今回の実証では、2.4キロワットアワーの蓄電池を搭載し、発災直後から電力復旧までの2週間の通信インフラ維持を目指す。衛星通信用アンテナの連続稼働100時間、スマホ充電100台分、ポータブル電源を活用した避難所での電力利用など、ライフラインを支えることを視野に入れる。

また、実証を行う金沢ターミナルでの立地を生かし、寒冷地、臨海部による塩害影響、日本海側特有の気象条件下での発電能力・耐久性の確認を行い、今後の風力発電需要の増加に対応するための実証試験を実施する。災害に強い分散型エネルギーとして広く知られるLPガスの発電機を組み合わせることで、風力発電では足りない電力を補い、より災害に強いエネルギー供給体制の構築を目指す。

「Type A」は、風力発電機のサイズが高さ1.5メートル、直径0.7メートル、風車本体の重量が55.5キログラム。騒音レベルは、風速5メートル/秒時に家庭用クーラーの駆動音(49デシベル)と同レベルに抑えられており、周辺環境への影響を最小限に抑えている。発電性能は、定格出力100ワット(風速11メートル/秒時)、最大出力250ワット(風速14.5メートル/秒時)で、3メートル/秒から14.5メートル/秒の風速範囲で発電が可能。運用期間は10年を想定する。

2023年1月から開始した青森県六ヶ所村での実証実験では、厳しい寒冷地環境下でも安定稼働することを確認している。