【バンコク時事】タイ下院(定数500)の最大野党・国民党のナタポーン党首(37)が28日、バンコクで時事通信のインタビューに応じ、「2027年にも実施される総選挙で勝利し、全面的な憲法改正などの改革を実行する」と語った。国民党は、憲法裁判所から解党処分を受けた前進党の後継として9日に発足したばかりで、所属議員は143人。党首が日本メディアの単独取材を受けたのは初めて。
 前進党は、王室に対する不敬罪を定めた刑法の一部改正を昨年の総選挙で公約に掲げたことが「国家転覆に当たる」と判断された。憲法裁は、14日には閣僚人事を巡り、最大与党・タイ貢献党のセター首相も失職させている。
 ナタポーン氏は「閣僚の任命だけで首相が失職し、政党も簡単に解散させられるのは異常。政治の安定化には憲法裁の権限を見直す憲法改正が必要だ」と指摘。「タイでは国民が権力を持っていない。(下院の任期が終わる)27年にも行われる選挙が重要な転換点となる。単独で過半数を獲得して政権を樹立し、抜本的な改革を進める」と強調した。
 前進党解党の要因となった不敬罪については「表現の自由に関わる問題で、改正するという主張を取り下げれば多くの人の信頼を失う。ただ、慎重に進める必要がある」と述べた。
 不敬罪を巡っては、21年に国会に提出された刑法改正案に署名したナタポーン氏ら当時の前進党議員44人が国家汚職追放委員会(NACC)から訴追され、政治活動を生涯禁止される可能性がある。ナタポーン氏は「NACCの調査では、国民の権利と自由を守るために署名したとしっかり説明する」と訴えた。
 日本についても「われわれは中央集権的な政府を変えたいと思っている。日本には優れた地方分権の仕組みがあり、学ぶ必要がある」と言及した。 
〔写真説明〕時事通信のインタビューに応じるタイ下院の最大野党・国民党のナタポーン党首=28日、バンコク

(ニュース提供元:時事通信社)