2014/04/09
防災・危機管理ニュース
インターリスクレポートより 情報セキュリティニュース<2014 No.1>
執筆 インターリスク総研 事業リスクマネジメント部
事業継続マネジメントグループ アソシエイト 沖 歩
近年発生している情報漏えい事件では、1件あたりの情報流出件数が非常に多くなっている。2013年度において国内では一度に数万件から数十万件の情報が流出する事件がたびたび発生している。一方、海外に目を向けると、例えばアメリカでは約4000万人分のクレジットカード情報が流出する史上最大級ともいわれる情報漏えい事件が発生している。
この背景にはサイバー攻撃が増加しているという事情がある。情報セキュリティ対策に多額の投資を行い、人材を投入し、社内体制を強化することができる企業は大企業など一部にとどまる。中小企業の多くは、対策への必要性を感じながらも投入できる資源が限られていたり、システム担当者がいても、十分な対応をとるための知識が不足しているなど、企業間でも大きな格差が存在する。
詳細は後述するが、今年は「Windows XP」などのサポート終了に伴う、いわゆる2014年問題があり、中小企業がサイバー攻撃のターゲットとなる可能性が高まると考えられる。セキュリティ対策が万全である大企業よりも、その業務委託先や取引先、関連会社などのセキュリティが脆弱な部分から入り込み、最終目的を達成する方が容易であるからである。中小企業にとって、行うべきシステム対策はあまりに広範囲に及び、どこから手をつけてよいのか、非常に悩ましい問題であるが、情報漏えい事件は単純なミスによるものも多く、基本的な対策を確実に行うだけでも防止効果は高い。
ここでは、発生件数の多い「内部の人間のミス(ヒューマンエラー)」による漏えいと、漏えいする情報量が多い「不正アクセスなどの外部からの攻撃」による漏えいについて、原因と主な対策について記載するとともに、2014年問題について説明する。
1.個人情報漏えいの現状
1.1個人情報漏えいの傾向
NPO日本ネットワークセキュリティ協会の調べによると、漏えい事件は2011年(通年)に1551件発生したが、2012年は上半期だけで954件発生しており、年々増加する傾向にある(図1を参照)。漏えい原因は、「管理ミス」「誤操作」「紛失・置忘れ」といった内部の人間のミス(ヒューマンエラー)が約85%を占めている(図2を参照)。
一方、図3の漏えい件数(インシデント件数)で見てみると、「不正アクセス」などの外部からの攻撃の場合、漏えい件数が非常に多い。これらの結果から、企業が情報漏えい防止対策を行う際には、ヒューマンエラーを減らすことと不正アクセス対策を実施することの双方が重要であるといえる。
- keyword
- ITセキュリティ
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
-
-
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方