3.企業間連携の実施状況
上述したように、企業間連携は企業の事業継続力を高める有効な手段といえるが、内閣府が2012年に調査した結果を見ると、自組織内においての対策は一定講じられてきているものの、企業間の連携に取り組んでいる企業は少ない。(図1参照)

4.企業間連携を実現する上での課題
言うまでもなく、企業間連携自体は、双方にメリットがなければそもそも実現するものではない。さらに双方にメリットがあると思われる場合であっても、実現に際しては次のような課題がある。

①企業間の関係
・平常時における相互の信頼関係が構築できていない。
・取引上の力関係により相手先に連携を求めることが困難である。
・自社の事業継続を一定委ねることになるため、本当に連携する相手側を信頼しても良いのかという懸念がある。
②企業秘密上の問題
・重要な取引先であっても、自社の生産能力や在庫状況などを開示すると、自社の弱みなど都合の悪い点が露呈し、取引上不利な状況に陥る可能性がある。
・競合先に自社の機密情報を開示することで、技術的な情報やノウハウが流出し、ビジネス上の競争力を失う可能性がある。
③経営戦略上の問題
・複数の取引先と懇意にしている場合、特定の取引先だけを優先して協定や契約を締結すると、その他取引先との関係が毀損してしまう可能性がある。
④品質の問題
・連携先が代替生産または提供する製品・サービスの品質が自社と同等のものを確保・維持できない可能性がある。
⑤法規制の問題大規模災害に備えた連携とはいえ、平常時においては独占禁止法や下請代金支払遅延等防止法に抵触してしまう可能性がある。

なお、内閣府の調査では、BCPに連携を取り入れようとするものの、「サプライチェーン内での調整が難しい」、「同業他社との相互協力関係の構築が難しい」といった結果がでている。(図2参照)

こうした課題は企業の規模や業種、サプライチェーン上の位置によって異なる。そのため最適な解決策は一概には言えないが、連携の必要性を自社内および相手先に訴え、緊急時だけでなく平常時においてもお互いにメリットがある形態にしたうえで、連携を担保する取り決めを作っていくことが必要である。また事例などを参考にすることも考えられるため、次に事例を紹介する。