インターリスクレポートより  BCMニュース<2014 No.1>

執筆 株式会社インターリスク総研
事業リスクマネジメント部 統合リスクマネジメントグループ
上席コンサルタント 榎田貞春

1.はじめに
未曾有の被害をもたらした東日本大震災から3年が経過し、大企業だけでなく中小規模の企業においても、BCP/BCMの策定が着実に進んでいる。しかしながら想定外と言われた同震災規模の災害を想定するとなると、多くの企業において自社の経営資源のみに依存した対応では限界があると思われる。また同震災の結果発生したサプライチェーンの途絶問題などからも、企業単独のBCP/BCMでは社会の要請に十分に応えることはできないことが明らかである。こうしたことから、自社に不足する経営資源を外部との連携によって補おうという動きや、サプライチェーン内の企業各社と連携を組もうという動きが活発化している。本稿では、こうした企業間の連携に焦点を当てて説明する。なお、ここでいう連携とは、発災後の緊急時においての連携だけではなく、平常時における事前対策も含んでいる。

2.企業間連携の種別
連携の目的に応じて連携対象は異なり、(1)取引先連携、(2)同業者連携、(3)地域連携の3タイプに分類できる。以下それぞれの特徴について説明する。

(1)取引先連携
災害発生時の製品・サービスの供給確保のために、主に自社にモノやサービスを供給している調達先と連携する形態である。大規模なメーカーがそのサプライチェーン傘下の企業と連携するケースが多い。

主導する側にとっては、緊急時においても事業の継続または早期復旧がより期待できるようになる。相手側(主導側から見た調達先)にとっても、主導側の要請を契機として事業継続に関する取り組みが推進することになる。

連携内容は多岐に渡るが、主なものは下記の通りである。
①優先供給に関するもの
・原材料や中間財、燃料や資機材、各種サービスの優先的な供給・貸出
②支援に関するもの
・技術者や応援要員の派遣、施設やインフラ、資機材、非常用物資などの相互提供、主導側からの資金の貸付など③情報共有に関するもの
・在庫や生産状況、災害時の被災状況や復旧状況等の情報を、関係者間で共有化できる仕組み

(2)同業者連携
同種の製品やサービスを提供する企業同士が、災害発生時の製品・サービスの供給確保のために、自社事業の代替を相手側企業に求める目的で連携する形態である。同時被災をしてしまう目的達成が困難となるため、ある程度離れた地域の企業を巻き込んだ連携とした方が効果は高い。同業者が加盟する組合や協会等の組織・団体が主導または仲介するケースが見られる。

主なものは下記の通りである。(いずれも被災企業から非被災企業に対するものである)
①代替提供・実施に関するもの
・製品の代替生産や各種サービスの代替提供
②支援に関するもの
・技術者や応援要員の派遣

(3)地域連携
同一地域に立地する企業が、災害発生に備えた事前対策や緊急時の相互支援・相互融通を目的に連携する形態である。当該地域の自治体や産業団体、地域の組合などが主導するケースが多い。

主なものは下記の通りである。
①事前対策に関するもの
・防災教育や訓練の共同実施、施設やインフラ、資機材、非常用物資などの共有
②緊急時対応に関するもの
・共同災害対策本部の設置運営、共同した情報発信など
・要員や資機材等の相互融通