2014/04/10
防災・危機管理ニュース
インターリスクレポートより BCMニュース<2014 No.1>
執筆 株式会社インターリスク総研
事業リスクマネジメント部 統合リスクマネジメントグループ
上席コンサルタント 榎田貞春
1.はじめに
未曾有の被害をもたらした東日本大震災から3年が経過し、大企業だけでなく中小規模の企業においても、BCP/BCMの策定が着実に進んでいる。しかしながら想定外と言われた同震災規模の災害を想定するとなると、多くの企業において自社の経営資源のみに依存した対応では限界があると思われる。また同震災の結果発生したサプライチェーンの途絶問題などからも、企業単独のBCP/BCMでは社会の要請に十分に応えることはできないことが明らかである。こうしたことから、自社に不足する経営資源を外部との連携によって補おうという動きや、サプライチェーン内の企業各社と連携を組もうという動きが活発化している。本稿では、こうした企業間の連携に焦点を当てて説明する。なお、ここでいう連携とは、発災後の緊急時においての連携だけではなく、平常時における事前対策も含んでいる。
2.企業間連携の種別
連携の目的に応じて連携対象は異なり、(1)取引先連携、(2)同業者連携、(3)地域連携の3タイプに分類できる。以下それぞれの特徴について説明する。
(1)取引先連携
災害発生時の製品・サービスの供給確保のために、主に自社にモノやサービスを供給している調達先と連携する形態である。大規模なメーカーがそのサプライチェーン傘下の企業と連携するケースが多い。
主導する側にとっては、緊急時においても事業の継続または早期復旧がより期待できるようになる。相手側(主導側から見た調達先)にとっても、主導側の要請を契機として事業継続に関する取り組みが推進することになる。
連携内容は多岐に渡るが、主なものは下記の通りである。
①優先供給に関するもの
・原材料や中間財、燃料や資機材、各種サービスの優先的な供給・貸出
②支援に関するもの
・技術者や応援要員の派遣、施設やインフラ、資機材、非常用物資などの相互提供、主導側からの資金の貸付など③情報共有に関するもの
・在庫や生産状況、災害時の被災状況や復旧状況等の情報を、関係者間で共有化できる仕組み
(2)同業者連携
同種の製品やサービスを提供する企業同士が、災害発生時の製品・サービスの供給確保のために、自社事業の代替を相手側企業に求める目的で連携する形態である。同時被災をしてしまう目的達成が困難となるため、ある程度離れた地域の企業を巻き込んだ連携とした方が効果は高い。同業者が加盟する組合や協会等の組織・団体が主導または仲介するケースが見られる。
主なものは下記の通りである。(いずれも被災企業から非被災企業に対するものである)
①代替提供・実施に関するもの
・製品の代替生産や各種サービスの代替提供
②支援に関するもの
・技術者や応援要員の派遣
(3)地域連携
同一地域に立地する企業が、災害発生に備えた事前対策や緊急時の相互支援・相互融通を目的に連携する形態である。当該地域の自治体や産業団体、地域の組合などが主導するケースが多い。
主なものは下記の通りである。
①事前対策に関するもの
・防災教育や訓練の共同実施、施設やインフラ、資機材、非常用物資などの共有
②緊急時対応に関するもの
・共同災害対策本部の設置運営、共同した情報発信など
・要員や資機材等の相互融通
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
-
-
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方