H3ロケット3号機により今月打ち上げられた先進レーダー衛星「だいち4号」は、地球周回軌道上で太陽光パネルなどの展開を完了した。能登半島地震の発生当日に、海岸隆起を詳細に捉えた「だいち2号」と同様、地殻変動を宇宙から観測できるのが最大の特徴だ。4号は観測能力がさらに向上することから、データを活用する現場からも期待の声が上がる。
 災害時に地殻変動などを検知し、防災に活用する国土地理院の栗原忍宇宙測地課長は「(一度に)観測できる幅が広いので、日本全土の観測頻度が年間4回から20回ほどに増える」と説明。観測頻度が増えると精度が上がって地表の微少な動きを捉えやすくなるため、災害時に限らず地盤沈下などの検知にも用途が広がるという。
 測量の世界に衛星観測がもたらした変化は絶大だ。以前は人力による実地測量が基本で、「数カ月、長いと1年以上かかることも」(栗原課長)あったが、1995年の阪神淡路大震災の際、だいちの前身「ふよう」が初めて宇宙から地殻変動を捉えて以降、技術革新が進んだ。
 元日の能登半島地震では、発災直後からだいち2号が緊急観測を実施。約9時間後には沿岸部の隆起を確認した。同課の石本正芳課長補佐は「観測設備が被災し、現場に行くことも困難だったが、2号がスピーディーに動いてくれた。隆起の現状が判明したときは非常に衝撃だった」と振り返った。
 2号は打ち上げから10年が経過し、設計寿命は大幅に超えたが、運用に支障はないという。4号と並行運用する計画もあるといい、石本さんは「双方向から同時に観測させることで、3次元のデータを得られる」と、「長寿」の衛星ならではの新たな活用法にも期待した。 
〔写真説明〕「だいち4号」の打ち上げ前に、取材に応じる国土地理院宇宙測地課の職員。左が栗原忍課長、右から2人目が石本正芳課長補佐=6月18日、茨城県つくば市

(ニュース提供元:時事通信社)