【ニューデリー時事】インドで総選挙を経て3期目のモディ政権が船出した。これまでの2期10年で同国は世界有数のスタートアップ(新興企業)大国に躍り出ており、今後も勢いを持続できるかが注目されている。
 首都ニューデリー郊外の都市ノイダ。真新しい建物の1フロアに技術者が集まり、ドローンの組み立てを行っていた。防衛関連や配送などに適したドローン製造を手掛ける新興企業「エンデュア・エア」だ。インド工科大学(IIT)カンプール校の学生だったラマ・クリシュナ最高経営責任者(CEO)らが2018年に設立した。
 主な取引先はインド軍や政府機関。売上高の増加分に連動して補助金が支給される政府の制度も活用し、規模を拡大してきた。従業員は125人、企業価値は3500万~4000万ドル(約56億~64億円)という。
 26歳のクリシュナ氏は共同創業者と共に、米経済誌フォーブスが発表したアジアの30歳未満の起業家30人に選出された。同氏は「インドを30年までに世界の『ドローン・ハブ』にする政府目標の実現に自信を与えてくれる」と、モディ政権の継続を歓迎した。
 膨大な若年層を抱えるインドは、IITなど難関校を中心に起業家を輩出。政府は16年、資金拠出や税制優遇といった新興企業育成策を打ち出した。政府によれば、同年以降、1日平均80社の新興企業が生まれ、総数は23年末時点で11万7000社を超えた。直接雇用だけで120万人以上に上る。未上場で企業価値10億ドル以上の「ユニコーン」は約110社と、米国、中国に次ぐ世界3番目の規模という。
 地元報道によると、南部ベンガルールに本拠を置く生成AI(人工知能)関連企業が大規模な資金調達を完了し、今年誕生したユニコーン第1号に。ここ数年、世界的な景気後退を受け、新興企業の資金調達は「冬の時代」を迎えていたが、これを脱却する兆しだと伝えられた。
 モディ首相は4月、自ら率いる与党インド人民党(BJP)の選挙公約発表の場で「新興企業や高付加価値サービスの世界的拠点を狙う」と強調。課題である若者の雇用創出のためにも、新興企業育成に引き続き注力する方針だ。 
〔写真説明〕自社のドローン製品を紹介する「エンデュア・エア」のラマ・クリシュナ最高経営責任者(CEO)=7日、首都ニューデリー郊外ノイダ

(ニュース提供元:時事通信社)