2024/05/13
防災・危機管理ニュース
【台北時事】頼清徳・台湾次期総統の就任式まで13日で1週間。台湾の離島・金門島沿岸の水域では、5月に入ってから中国の海警船が4回にわたり編隊を組んで航行した。挑発的な行動は、習近平指導部が「台湾独立派」と敵視する次期政権に対する圧力の一環とみられ、台湾当局は警戒を強めている。
台湾の海洋委員会海巡署(日本の海上保安庁に相当)は6日、「最近、中国海警局の船が隊列を組んで意図的に金門島水域を航行している」と発表。同署によると、9日には海事部門や漁業部門の公船も初めて加わり、10隻余りが沿岸水域に展開した。
台湾当局は、実効支配する金門島の沿岸に「禁止水域」と「制限水域」を設定し中国船の進入を規制している。海巡署は11日、「総統就任式期間の国家の安全を確保するため、強力な掃討計画を実施する」と発表。金門島を含む三つの離島で巡視艇や人員の配置を増やし、取り締まりを強化した。
1月の総統選で中国と距離を置く民進党の頼氏が当選して以降、中国はさまざまな方法で台湾への圧力を強めている。金門島周辺では、中国漁船の転覆死亡事故をきっかけに海警船が「パトロール」と称して台湾側水域へ進入するようになったほか、台湾の観光船に対して異例の乗船検査も実施。気球の台湾上空通過や、台湾海峡上空の民間航空路の一方的な変更などもあった。
外交面でも、頼氏の当選直後の1月に南太平洋の島国ナウルが台湾と断交し、中国と国交を樹立。外交関係を結ぶ国の切り崩しが続く。
中国の狙いを、民進党関係者は「民進党政権は中国にうまく対応できないと印象付けることで、世論を揺さぶることだ」と指摘する。4月に習国家主席が親中的な最大野党・国民党の馬英九前総統と会談したり、国民党訪中団に対して当局が台湾観光の部分再開を伝えたりしたことも、揺さぶりの一部とみられる。
こうした圧力の中、頼氏が就任演説で中台関係をどう語るのかが最大の焦点だ。頼氏は統一も独立も唱えない蔡英文総統の「現状維持」路線を継承する方針を示している。ただ、かつて自らを台湾独立派と公言していた頼氏は信念の強さで知られており、機と見れば対中強硬的な独自色を出すとの臆測がくすぶっている。頼氏は就任後、史上初めて総統として立法院(国会)でも演説する見通し。
〔写真説明〕台湾の頼清徳次期総統=1月13日、台北(AFP時事)
〔写真説明〕台湾の離島・金門島水域に進入した中国の海警船=台湾海洋委員会海巡署が9日に提供
(ニュース提供元:時事通信社)


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