【ワシントン時事】中国系短編動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を禁止する米国の法律を巡り、米運営会社と中国の親会社、字節跳動(バイトダンス)は米政府を提訴し、全面対決の構えだ。米政権や議会では、米国に関するデータの中国政府への流出や情報操作への悪用といった安全保障上の懸念が根強い。バイトダンスは「具体的な証拠を示していない」と禁止法に猛反発。法律は、憲法が保障する表現の自由を侵害していると主張している。
 同法は、バイトダンスがティックトックの米事業を売却しなければ、米国内でのアプリ配信を禁じる内容で、4月に成立した。
 米国が懸念するのは、2017年に施行された中国の国家情報法。当局への協力を中国企業に義務付けており、バイトダンスは中国当局から欧米のデータ提出や情報操作への協力を求められれば、拒めないとの見方が多い。22年に運営会社従業員による欧米記者に関する個人情報の不正収集が発覚したことも疑念を呼んだ。
 米メディアによると、昨秋にイスラエルとイスラム組織ハマスの軍事衝突が始まった後、ティックトック上でパレスチナ寄りの動画が増えたとの見方が浮上。米議会では、世論操作に利用されるとの危機感が一段と高まったという。
 米連邦捜査局(FBI)のレイ長官は、法案審議中の今年3月、上院公聴会で「バイトダンスはどう見ても、中国共産党の影響下にある」との見解を表明。意図的に偏った動画を流すなど、情報操作に利用されても「把握は非常に困難。そのことが安保上の懸念を重大なものにしている」と指摘した。
 バイトダンスは訴状で、同社株の約6割は欧米の資産運用会社などが保有しており、自社はグローバル企業だと反論。中国への情報流出という安保上の懸念の根拠が弱く、「表現の自由に重荷を課すのは完全に不当だ」と訴えている。 

(ニュース提供元:時事通信社)