RMFOCUS Vol.46より

株式会社インターリスク総研コンサルティング第一部 CSR・法務第二グループ
グループ長 上席コンサルタント 奥村 武司
アソシエイト 大豆生田 麻子

1.はじめに

近年、フェイスブック、ツイッター、ミクシィ、YouTubeといったソーシャルメディアの普及により、従来ではマスメディアでしかなしえなかったような広範囲の情報発信が、個人でも容易になっている。そもそもソーシャルメディアとは、オンライン上でユーザー同士が情報を交換(送受信)することから始まり、1対多」「「多対多」の双方向でテキスト・画像・動画等のデータを使ったコミュニケーションを可能とするものである。日本のソーシャルメディア人口は5,060万人、フェイスブックだけでも利用者数は1,380万人(※1)と推測されており、日本国内でも約10人に1人が利用していることになる。本稿をお読みの皆様の中にも、プライベートでアカウントを取得している方や、会社業務で公式アカウントの運営に携わっている方がおられるだろう。ソーシャルメディアが絡むトラブルが後を絶たない中、自ら積極的に情報発信などに活用するのであれ、もっぱら閲覧といった形で受け身に利用するのであれ、ソーシャルメディアの特性、企業に与える影響やリスクを認識し、適切に利用することがますます重要になっている。

2.リスク対策の必要性


個人にも企業にもソーシャルメディアがもたらすメリットは大きい。個人は、ソーシャルメディアを通じて様々な情報を入手・交換でき、同じ趣味や嗜好の友人知人とのつながりを構築できる。企業にとっては、広報戦略や販売促進を目的としたユーザーとのより近いコミュニケーションを可能とするツールであり、O2O(※2)マーケティングにはなくてはならないものとなっている。

一方、ソーシャルメディアの不適切な利用が、利用者個人にとどまらず、関係する企業にも大きな損失を与える場合があり、ソーシャルメディアを新たなリスク要因ととらえ、企業が管理していくことが必要となっている。

ソーシャルメディアの特徴として、その拡散性と迅速性があり、不用意に書き込んだ内容が瞬時に多くの人の目に触れることとなる。ほとんどのサービスでは、情報の公開範囲を設定できるが、自分とつながりのある「友達」等の設定によっては、意図するしないにかかわらず投稿内容への「いいね!」「引用」「返信」や、、「シェア」等により、その内容が広く拡散してしまう。また、投稿を知らせる機能も充実しており、たとえ投稿者本人がすぐに取り消したとしても情報は既に第三者に伝播されている場合も多い。このように従来のメディアとは違った特性、リスクを有するものがソーシャルメディアなのである。

では、企業はソーシャルメディアをリスクという観点でどのようにとらえているのだろうか。企業におけるソーシャルメディアのリスク意識調査では、「社員の個人アカウントから情報漏えいすること」について80.7%、「社員による顧客や他社に対する誹謗・中傷からトラブルが発生すること」について77.8%、「企業の公式アカウントから不適切な発言をしてトラブルが発生すること」について73.3%の企業がリスクを認識していると回答している。その他の項目についても半数以上がリスクを認識しており、ソーシャルメディアが企業にとって留意すべきリスクとしてとらえられているといえるだろう(表1)。