2013/06/21
防災・危機管理ニュース
(2)発災時の避難行動開始時期
避難の目安となる情報には、気象台が発表する大雨注意報・警報、洪水注意報・警報の他に、気象庁と国土交通省若しくは都道府県と共同で発表する「洪水予報」がある。
洪水予報は5段階に分けられ、レベル3の「はん濫警戒情報」が発表された時点で、住民は避難を判断・開始し、レベル4の「はん濫危険情報」が発せられた時点では、避難が完了していることが求められている。一般に、洪水時は水位が急激に上昇する傾向があるため、「はん濫警戒情報(レベル3)」が発表された時点では、避難のための時間が残っているのみであり、製品や設備の高所への移動などの時間は全くない。従って、工場・事務所が発災時に必要な対応を講じるためには、「はん濫注意情報(レベル2)」が発せられた時点で、行動を開始する必要がある。
また、気象庁では、2013年8月末までに「特別警報」の運用を開始する。これまでの「警報」の発表基準をはるかに超える現象に対して発表されるものであり、「特別警報」が発表された場合には、直ちに命を守る行動をとることが求められる。
特別警報の発表前には、これまで通り「注意報」や「警報」が発表される。「注意報」が発表された時点で、避難場所の再確認や、重要データの持ち出しなどの避難行動を開始し、「警報」が発表された段階では、速やかに避難することが必要である。
5.おわりに
地球温暖化により、集中豪雨の頻度が高まることが予想され、水害へのさらなる備えが必要である。水害をはじめとした自然災害への対応は、事前の備えによりリスクを減らすこと、及び早期の情報入手により避難などの行動開始に関して的確な判断を下すことが重要である。また、一度のリスクの洗い出しにより関係者の防災への心構えや意識は大きく変わる。本稿で紹介した事前対応策をもとに、関係者と一体となった対策に着手していただければ幸いである。
〔2013年6月17日発行〕
【本レポートに関するお問い合わせ】
東京海上日動リスクコンサルティング株式会社
企業財産事業部リスクモデリンググループ
Tel.03-5288-6234
転載元:東京海上日動リスクコンサルティング株式会社 リスクマネジメント最前線2013 No.26
東京海上日動リスクコンサルティング株式会社
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/19
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/11/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方