(イメージ:写真AC)

危機管理規程がありながら、なぜ活用されなかったのでしょうか。
10月30日、学校法人日本大学アメリカンフットボール部薬物事件対応に係る第三者委員会の報告書は危機時における判断失敗の在り方を明らかにしました。

日本大学は不適切判断と不適切対応のオンパレードです。

昨年の段階で保護者からの告発をきっかけに調査を実施し、学生が大麻使用を申告したのに処分しなかった。複数の部員が大麻を使用していると把握したのに、その事実をないものとしてた。報道対応で虚偽回答した。危機管理規程やマニュアルを無視し危機管理態勢を構築をしなかった。

この調査報告書の中で最も驚いたのは、調査に対して自己正当化し続けるトップ3の態度。教育者として恥ずべき対応です。調査委員も愕然としています。彼らは一体何を守ろうとしていたのでしょうか。

大麻使用を知りながら放置

大学が最初に部員の大麻使用を知るのは、昨年の10月23日。アメフト部の保護者から一通のメールが届いた時です。内容はアメフト部の学生寮内部で大麻疑惑があるとするものでした。

その後、保護者会を開催し、当日複数の保護者からも大麻使用の噂があるとの情報提供があったため、翌日から監督とコーチは部員のヒヤリングを開始。ある部員が「2022年7月頃、先輩部員に誘われ、アメフト部の学生寮屋上で初めて大麻を使用した。その後も頻繁に誘われており、数回に一度は断り切れず、複数名で使用した」(「調査報告書」 p.21)と申告しました。

監督は翌日28日に報告書を作成しましたが、競技スポーツ部長には提出せず。保護者からの情報提供を受けて調査しましたが、報告書を作成しただけで、部員の大麻使用を把握したにもかかわらず使用をした部員らを処分せず、違法行為を放置し、上司にも報告しなかったことになります。

警察来校後に調査せず

12月1日に、警視庁組織犯罪対策部薬物銃器対策課係官2名が日本大学を訪れます。「2022年5月と11月に警視庁の薬物ホットラインにアメフト部内で大麻使用者がいるという通報があった」として、薬物乱用防止講習会を開きたいとの提案でした。

対応したのは澤田副学長と競技スポーツ部長。酒井学長も報告を受けましたが、何もしていません。

ここで少なくとも副学長と学長は、アメフト部内での大麻使用の通報について知るわけですから、直ちに調査をする、あるいは理事長に報告して危機管理総括責任者(常務理事:総務担当)を中心に危機管理態勢を構築するか準備に入る必要がありました。

なぜなら、同大学には危機管理規程があり、不正・不祥事の概念(施設管理上の問題や学生の犯罪行為も含まれている)、担当常務理事への報告、総務部や企画広報部との連携、適切な情報開示などの対応手順が定められているからです。しかし、危機管理規定は無視されました。

【 ​リスクマネジメントジャーナル】