災害時のペット同行・同伴避難の備えと対応について
ペットとの同行避難を当たり前にするために
一般社団法人 日本防災教育訓練センター 代表理事/
一般社団法人 日本国際動物救命救急協会 代表理事
サニー カミヤ
サニー カミヤ
元福岡市消防局レスキュー隊小隊長。元国際緊急援助隊。元ニューヨーク州救急隊員。台風下の博多湾で起きた韓国籍貨物船事故で4名を救助し、内閣総理大臣表彰受賞。人命救助者数は1500名を超える。世田谷区防災士会理事。G4S 警備保障会社 セキュリティーコンサルタント、FCR株式会社 鉄道の人的災害対応顧問、株式会社レスキュープラス 上級災害対策指導官。防災コンサルタント、セミナー、講演会など日本全国で活躍中。特定非営利活動法人ジャパンハート国際緊急救援事業顧問、特定非営利活動法人ピースウィンズ合同レスキューチームアドバイザー。
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災害時には何よりも人命が優先されますが、先日の西日本豪雨ではさまざまな避難所の様子をニュースやYoutubeで見ていると、体育館や教室などでペットと同伴避難している映像を多く見ることができて安心しました。
過去の災害では、避難所にペットと一緒に避難できないと思ってしまい家に置いてきてしまった家族が、後で心配になって家に戻り、余震で家屋が倒壊したり土砂で流されたりするなどの2次災害で亡くなるという悲しい事故もありました。
また、避難所で「動物アレルギーの人が居るかもしれない」とペットの受け入れを拒否された飼い主が車上生活を余儀なくされ、急性肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)を発症して亡くなった事例もありました。
現在は、都内の防災イベントにおける避難所運営訓練などでも、ペットを蔑視するアニマルハラスメント的な意識を持った避難所運営者は確実に減少傾向にあるようで、下記の法律などをエビデンスに飼い主の責任として、公的・私的な避難所にペットと同伴避難させることが常識になってきています。
「動物愛護管理法 所有者等の責務(第7条)家庭動物の飼養及び保管に関する基準」(平成14年環境省告示、平成25改正)
緊急時対策(発生時の緊急措置を定める、避難に必要な準備、発生時の家庭動物の保護、動物による事故防止、同行避難と家庭動物の避難先の確保の努力等)を規定
動物愛護管理基本指針(環境省告示)
動物愛護管理法第5条
(第4)動物愛護管理基本指針の点検及び見直し(災害時対策の講ずべき措置を抜粋)
・動物愛護管理推進計画に加えて、地域防災計画においても動物の取扱い等に関する位置付けを明確化。
・所有者(飼い主)責任を基本とした同行避難や避難時の動物の飼養管理、放浪動物等の救護等、地域の実情や災害の種類に応じた対策を適切に行えるよう体制の整備を図ること。
・関係省庁は、この体制整備に向けて調整。
・逸走防止や所有明示等の所有者の責任の徹底に関する措置の実施を推進すること。
・災害時に民間団体と協力する仕組みや、地方公共団体間で広域的に対応する体制の整備
こうした状況を踏まえて、2013年6月に環境省から「災害におけるペットの救護対策ガイドライン」が示され、今年3月には同省から「人とペットの災害対策ガイドライン」が発行されました。
■「人とペットの災害対策ガイドライン」(環境省)
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h3002.html
一般の飼い主をはじめ、全国で活動されているペット関係ボランティア団体、動物愛護団体などが、過去の避難所運営活動などの災害対応上、問題が指摘されていたペットの同行避難や同伴避難対策について丁寧に答えており、とてもわかりやすくまとめられています。
■「人とペットの災害対策ガイドライン」を読も
自分を守り、ペットを守る
http://www.risktaisaku.com/articles/-/6084
上記の環境省の資料を受けて、多くの自治体がペット連れの飼い主家族にどう対応するかの方針等を定めました。特にわかりやすいのは 「さいたま市地域防災計画」で、ペットを連れた飼い主が、「同行避難」をすることを前提としています。
また、さいたま市では、環境省ガイドラインや地域防災計画の内容を具体的に解説する「避難所におけるペット対応マニュアル」を作成。避難所においての標準的なペット受け入れ手順やペット同伴避難のルール等について示していますので、各避難所の実情に応じた受け入れ体制づくりを行うことができ、飼い主には平時からの対策についてもペットのために行うという災害対応モラルの向上にも繋がっています。
東日本大震災では、「ペットの同行避難」が十分に周知されていなかったため、家族であるペットと離れ離れになってしまい、その結果、多くの放浪するペットが生まれてしまい、野生化したり、今でも飼育者の元に戻れないペットが多数います。
このような悲しい事態を防ぐためにも災害時のペット同伴避難やペット同行避難を推進することは、動物愛護の観点のみならず、放浪動物による人への危害防止や生活環境保全の観点からも必要な措置です。
さいたま市の避難所におけるペット対応マニュアルは下記からダウンロードできます。
■避難所におけるペット対応マニュアル(さいたま市)
http://www.city.saitama.jp/001/011/015/006/p055713_d/fil/hinanjomanual.pdf
素晴らしいのは、ワードファイルでもダウンロードできますので、それぞれの避難所の実情に応じて編集可能で、必要に応じて更新できるようにしています。
■ぺットの災害対策リーフレット(さいたま市)
http://www.city.saitama.jp/001/011/015/006/p055713_d/fil/saigaitaisaku.pdf
さらに千葉市が避難所におけるペット対応の手引きも大変わかりやすく、避難者の立場に立ったアドバイスになっていると思います。こちらもワード版があります。
■避難所におけるペット対応の手引き(千葉市)
https://www.city.chiba.jp/hokenfukushi/kenkou/seikatsueisei/documents/pettebiki.docx
長崎県が作成した「避難所等におけるペット受入れ対応マニュアル」では、過去の災害において、実際に開設された避難所におけるペットの受け入れ手順、ルール決め、各種記録用紙の内容などを詳しくまとめられてあり、大変参考になります。
■避難所等におけるペット受入れ対応マニュアル(長崎県)
https://www.pref.nagasaki.jp/shared/uploads/2017/07/1499650685.pdf
いかがでしたでしょうか?
今、日本全国でさまざまなペットの防災、ペットの避難所対策などの講習会などが行われています。どれも、とても貴重で重要な内容だと思いますが、大切なのは、一つの方法を覚えるのではなく、様々な方法を知り、学び、その地域にあった多様な避難者対応ができることだと思います。
ペットを家族にもつ方々もそうでない方々も、災害への気づきときっかけの入り口として、地域の避難所運営イベントなどに積極的に参加して、積極的に自分と家族の災害対応能力を育てていくことがこれからの日本を守る力になっていくと思います。
(了)
ペットライフセーバーズ
https://petsaver.jp
info@petsaver.jp
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