今回紹介させていただくのは、BCMの専門家や実務者による非営利団体であるBCI(注1)が2023年9月に発表したもので、世界の事業継続関係者が気候変動リスクに対してどのように認識し、対策に取り組んでいるか(いないか)を明らかにしようとするものである(注2)。
本報告書は下記URLから無償でダウンロードできる(BCI会員でなくても、ページの下の方にある「Register for Free」という部分をクリックして連絡先などを登録すればダウンロードできるようになる)。
https://www.thebci.org/resource/bci-extreme-weather---climate-change-report-2023.html
(PDF 94ページ/約 13.3 MB)
2022年版と比べて調査項目が大幅に増え、報告書のページ数も約1.5倍となっている。報告書の目次構成は次のようになっており、2022年版よりも広範囲にわたって調査検討が行われている。
- Executive summary (要約)
- Climate risk: the challenges, the threats, and the impacts (気候リスク:困難、脅威、およびインパクト)
- Organizational treatment of climate risk (気候リスクに対する組織としての扱い)
- Climate risk: drivers and barriers (気候リスク:推進力と障壁)
- Regulations and regional approaches (規制や地域ごとのアプローチ)
- Organizational preparedness for climate risks (気候リスクに対する組織としての備え)
- The alignment of resilience with environmental, social and governance frameworks (環境、社会、およびガバナンスのフレームワークに対するレジリエンスの適合)
- Technology and climate risk (テクノロジーと気候リスク)
- Supply chains and climate risk (サプライチェーンと気候リスク)
- Looking forward (将来の展望)
- Annex (付録)
これらの中から本稿では、特に事業継続との関連が深く、実務に比較的近い課題に関するデータを選んで紹介させていただく。
図1はサプライチェーンに関する調査結果で、図の左側は新規サプライヤーと契約する前に、サプライヤー側で気候リスク対策が実施されているかどうかを考慮するか、という設問に対する回答である。6.4%が全てのサプライヤーに対して、19.3%が主要なサプライヤーに対して考慮すると回答しているほか、8.3%はその場の判断で考慮することがある(ad hoc basis)と回答している。
また右側は、もしサプライヤーが気候リスクに直面している地域にある場合に、他の地域にバックアップのサプライヤーを確保するか、という設問に対する回答で、6.4%が全てのサプライヤーに対して、39.5%が主要なサプライヤーに対して確保すると回答している。
さらに図2は、Tier 2/3サプライヤー(注3)に対して、それらが気候リスクに直面している場合にバックアップのサプライヤーを確保するかを尋ねた結果である。左側の青い部分が全てのサプライヤーに対して、隣の黄色い部分が主要なサプライヤーに対して確保するという回答である。
読者の皆様はこれらの数字を見てどうお感じになっただろうか? 筆者の個人的な印象としては、左右とも意外と低いなと思った。もちろん具体的な評価基準がないので、あくまでも印象であるが、これまで世界各地でさまざまな気象現象によるサプライチェーン途絶事例がたびたび発生しており、多くの企業が影響を受けたと思われるので、全体的にもう少し対策が進んでいるかと思っていた。2022年版との間では若干条件が異なるので(注4)比較しにくいが、来年以降これらの数字がどのように変化するか、継続的に見ていきたいと思う。
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