就活生からキャンセルされる企業
第5回:学生は業績だけでなく価値観もよく見ている
吉野 ヒロ子
1970年広島市生まれ。博士(社会情報学)。帝京大学文学部社会学科准教授・内外切抜通信社特別研究員。炎上・危機管理広報の専門家としてNHK「逆転人生」に出演し、企業や一般市民を対象とした講演やビジネス誌等への寄稿も行っている。著書『炎上する社会』(弘文堂・2021年)で第16回日本広報学会賞「教育・実践貢献賞」受賞。
2023/08/09
共感社会と企業リスク
吉野 ヒロ子
1970年広島市生まれ。博士(社会情報学)。帝京大学文学部社会学科准教授・内外切抜通信社特別研究員。炎上・危機管理広報の専門家としてNHK「逆転人生」に出演し、企業や一般市民を対象とした講演やビジネス誌等への寄稿も行っている。著書『炎上する社会』(弘文堂・2021年)で第16回日本広報学会賞「教育・実践貢献賞」受賞。
早いもので、あっという間に8月になりました。近年、大学生の就職活動が早期化していましたが、ついに25年卒から採用直結型インターンシップが解禁となり、3年生は6月あたりからインターンシップの申し込みの準備でてんやわんやの騒動です。
3年生は、本来は専門的な授業が本格化する時期です。社会学専攻で言えば、1・2年生のときに社会調査法や統計学を学び、3年生で社会調査実習やゼミなどで実際に調査を行い、1年かけてノウハウを学ぶのが理想的です。
統計学がわかるデータ活用人材が不足しているとか、大学で重点的に養成しろとか、あちこちで言われていた気がしますが、3年生の夏から実質的に就活が始まるのでは、正直、育てようがないのではと心配しています。
前倒しになった分、4年生でしっかり勉強させられればまだいいのですが、内定が取れていない学生はそれどころではありませんし、内定が取れている学生でも、今度は入社前研修が入ってくるので、なかなか勉強に集中できません。
採用する企業の側も対応が大変でしょうし、現在の大学生の就活スケジュールは社会的な損失が大きいのではないでしょうか。
ところで、新卒採用活動には、さまざまなリスクがあります。2023年6月中旬、マイナビ上で一方的な内定取り消しをされたというTwitter(現X)への投稿が話題になりました。投稿者は社名を明らかにしなかったものの、投稿者の記述に当てはまる企業が、いくつか候補として上げられていたようです。
Z世代の特徴は、「共感」だと言われています。
Z世代と言っても皆が皆、ソーシャルメディアを使いこなしているわけではありませんが、嬉しいことがあればソーシャルメディアに投稿して一緒に喜んでもらい、不条理な目に遭えば一緒に怒ってもらおうとすることは珍しくありません。内定取り消しのような重い行為でなくとも、会社説明会やインターンシップ、面接等で感じた違和感やトラブルなどを投稿されてしまうことも普通に起きてしまいます。
参考:金間大介・長田麻衣「Z世代向けマーケティングは「共感」が鍵になる
「憧れ」に取って代わる新しい価値創出の極意」
https://toyokeizai.net/articles/-/675439
先日発表されたマイナビの調査では、面接では不適切とされている質問がまだ聞かれていることが明らかになりました。
提示された「面接では不適切な質問」12項目のうち、どれも「聞かれたことはない」と答えたのは23年卒が60.4%、24年卒が67.7%となっています。去年と比べて改善していますが、それでもまだ32.3%がなんらかの不適切な質問を聞かれた経験があるということです。
特に「子供ができても働き続けるつもりかどうか」を聞いてしまう面接担当者が2023年になってもまだ存在しているとはびっくりしました。
相手はZ世代ですから、うっかり不適切な質問をしてしまうと、友人知人に共有されるだけでなく、不特定多数が閲覧できるソーシャルメディアに投稿されてしまうことも覚悟しなければなりません。
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