危機突破内閣の重要施策に

「危機突破内閣」。自民党の安倍晋三総裁は、26日に発足する見通しの新内閣をこう名付けた。

自民党の総合政策集「J-ファイル2012」には、今後、高い確率で発生することが予測される首都直下型や南海トラフの巨大地震に対して、「国民の命を守り抜く防災対策を徹底する」と冒頭に明記されている。

具体的な施策としては、国土強靭化施策として、首都直下地震や東海地震と連動性が指摘されている東南海・南海地震等に備えるため、事前防災、減災の考え方に基づく『国土強靭化基本法案』『南海トラフ巨大地震対策特別措置法案』『首都直下地震対策特別措置法案』を速やかに成立させ、今後10年間で、避難路・津波避難施設や救援体制の整備等の減災対策を強力に推進し、特に、最初の3年間は集中的な取り組みを展開するとしている。加えて、首都機能等の維持・強化及び分散を図るとともに、日本海国土軸など多軸型国土の形成と物流ネットワークの複線化を進め、国土全体の強靭化を図るとする。

これに併せて、経済の建て直しでは、成長のみならず、「企業のBCP(事業継続計画)策定支援」や、本社機能、拠点機能の戦略的地方展開の支援、サイバーセキュリティの強化など、守備も強化する。

BCPでは、従来の被災時の対応を中心とした計画ではなく、「被災を受けなかった場合の被災地に対する支援のための緊急的な生産体制の変更も盛り込むように働きかける」としており、企業単独のBCPから企業連携型のBCPを推進していく考えを強調している。今後、具体的にどのような施策が打ち出されるのかは不明だが、サプライチェーンの強化が1つのキーワードになることは間違いない。

他方、企業へのBCPの浸透は未だ十分とは言えない。特に中小企業のBCPについては10%にすら至らないともいわれる。

国全体の危機管理力を高めるには、企業、国民の協力が不可欠だ。政府が単なる旗振り役となるのではなく、その必要性を中小零細企業、国民一人ひとりまでが認識し、仮にそのためにコストや労力が必要になったとしても、取り組めるだけの社会の仕組みを構築することが不可欠になるだろう。

■企業のBCPの策定支援(J-ファイルより)

東日本大震災によるサプライチェーンの分断を教訓とし、企業が緊急事態に備えたBCP(事業継続計画)を策定し、継続的な改善を行うことに対する支援制度を強化します。

 また、従来のBCPは自社が被災した時の対応を中心に定められてきましたが、東日本大震災を教訓として、全国的なサプライチェーンの維持のため、被災を受けなかった場合の被災地に対する支援のための緊急的な生産体制の変更についても、BCPに盛り込むよう働きかけていきます。「企業単独型のBCP」から「企業連携型のBCP」の策定に向け、支援を行っていきます。

 なお、策定されたBCPのうち、緊急事態において、被災地に対する自社の緊急支援内容については、日頃から可能な範囲で公開するシステムを構築し、いざという時のために備えます。

※参照資料「J-ファイル2012」 http://jimin.ncss.nifty.com/pdf/j_file2012.pdf