2012/11/28
防災・危機管理ニュース
大林組は11月26日、東海・東南海・南海地震の震源域が連なる「南海トラフ巨大地震」を想定した震災訓練を実施したと発表した。
■目的:南海トラフ巨大地震が発生した場合、建物の倒壊に加えて津波により広域かつ甚大な被害が想定されるため、従業員の安全確保を第一に、被害情報の早期把握、迅速な災害復旧体制の構築、復旧要員派遣などの被災店への支援体制に焦点を当てた訓練を実施した。
■実施日時:平成24年11月26日(月)
■災害想定:南海トラフ巨大地震が発生。マグニチュード9.0、太平洋沿岸の広範囲にわたり震度7の揺れを観測した設定。
■訓練項目:
・被害情報の早期把握、迅速な災害復旧体制の構築、復旧要員派遣
・国内事業所およびグループ会社17社とも連携した被害報告訓練
■訓練参加者:国内事業所の全社員(約9,200人)
■訓練概要:発災後、本社(東京都港区)に副社長の金井誠を本部長とする震災対策本部を速やかに立ち上げ、名古屋、大阪、広島、四国、九州の被災店と支援店とをTV会議などで常時接続を行い、大林組独自開発の地震被害予測システムに基づく自社施設、施工中物件および顧客物件などの被災想定について情報を共有した。
被災店内では、各地域の事業所と電子メールおよびMCA(Multi Channel Access System)無線などを利用した報告訓練を実施するとともに、協力会社と連携して労務・資機材などの施工力の確保について確認。
一方、対策本部では、被災店からの支援要請を確認のうえ、対策本部各班による支援策の構築を行った。中でも広域にわたり復旧要員派遣や生活物資・資機材の調達・輸送が必要になることから、早期にかつ確実に投入する方策について検証し、各地の機械工場、機材センターを物流拠点とした体制を見直した。
■災害に対する復旧・復興への取り組み(南海トラフ巨大地震想定訓練)
従業員の安全確保のために
(1)全社員(約9,200人)を対象とした安否確認の実施
(2)各事業所における点呼確認などの初期行動訓練の実施
(3)津波被害エリアの事業所における避難計画の策定と避難訓練の実施
(4)帰宅困難者帰宅対応策の検討(帰宅ルールの決定、グループ間での帰宅困難者相互支援体制の構築)
(5)グループ企業からの被害報告訓練の実施
被害情報の早期把握のために
(1)大林組独自の地震被害予測システムにより、施工物件の被害の予測
内閣府が公表した新たな被害想定に基づき、地震被害予測システムにより施工物件の被害をシミュレーションした。
このシミュレーション結果を基に、応急危険度判定員の派遣や資機材の投入など、限られた経営資源の効率的かつ迅速な対応につなげる。
(2)営業、施工担当の約2,100人の社員を対象にした、携帯BCP(被害情報自動集約システム)による被害状況報告の実施
(3)初動期における被害状況調査の実施(ヘリコプターによる上空からの被災状況調査)
災害復旧体制の迅速な構築のために
(1)対策本部(本社)、現地対策本部(被災店)の早期立ち上げ
各本部を早期に立ち上げ、各本部間をTV会議、WEB会議、衛星携帯電話、MCA無線などの複数の通信手段を用いて連携訓練を実施。
(2)労務・資機材などの施工力確保を目的とした協力会社との連携訓練の実施
(3)代替え拠点における拠点参集スタッフ訓練の実施
対策本部設置予定の本社が被災し、ビル機能を維持できない場合を想定して、代替え拠点となる大林組技術研究所(東京都清瀬市)において、
周辺居住者による参集訓練を実施した。
(4)応急危険度判定員による顧客および地域における建物被害度調査のさらなる早期把握に向けた検討の実施
東日本大震災以降、応急危険度判定員(現在約700人)の増強および装備品の拡充を図っており、これを推進するとともに、地震被害予測
システムなどのツールを活用し、震災時トリアージ(※1)の考え方を採り入れた被害調査を展開し、早期復旧につなげる。
※1 トリアージ : 大災害時における、緊急度に応じた優先順位の判断
被災店への実効性の高い支援のために
(1)復旧要員の選定、派遣手段の確認および輸送ルートの選定の実施
(2)各地域の機械工場、機材センターを物流拠点として、生活物資・資機材の調達先の確認および輸送手段、輸送ルートの選定の実施
災害に対する備え
全社員に対して、一日分の非常用飲食料などをセットにした「あんしんボックス」の配布
同社では、従来、備蓄品の保管スペースが十分に確保できない現場などの事業所については、本支店や機械工場などの拠点に保管している集中備蓄を速やかに搬送することとしていたが、発災直後の搬送に課題が残ることから、必要最低限の飲食料を各自の机の中で保管することを目的に、常設、現場を問わず全社員に「あんしんボックス」を配布した。
自家発電機設備のない事業所を中心に、震災時における停電に備えて、最低限の初動対応を賄うため、蓄電設備の設置(14事業所)
※ 本記事は、以下のサイトの情報をもとにまとめたものです。
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
-
現場対応を起点に従業員の自主性促すBCP
神戸から京都まで、2府1県で主要都市を結ぶ路線バスを運行する阪急バス。阪神・淡路大震災では、兵庫県芦屋市にある芦屋浜営業所で液状化が発生し、建物や車両も被害を受けた。路面状況が悪化している中、迂回しながら神戸市と西宮市を結ぶ路線を6日後の23日から再開。鉄道網が寸断し、地上輸送を担える交通機関はバスだけだった。それから30年を経て、運転手が自立した対応ができるように努めている。
2025/02/20
-
能登半島地震の対応を振り返る~機能したことは何か、課題はどこにあったのか?~
地震で崩落した山の斜面(2024年1月 穴水町)能登半島地震の発生から1年、被災した自治体では、一連の災害対応の検証作業が始まっている。今回、石川県で災害対応の中核を担った飯田重則危機管理監に、改めて発災当初の判断や組織運営の実態を振り返ってもらった。
2025/02/20
-
-
2度の大震災を乗り越えて生まれた防災文化
「ダンロップ」ブランドでタイヤ製造を手がける住友ゴム工業の本社と神戸工場は、兵庫県南部地震で経験のない揺れに襲われた。勤務中だった150人の従業員は全員無事に避難できたが、神戸工場が閉鎖に追い込まれる壊滅的な被害を受けた。30年の節目にあたる今年1月23日、同社は5年ぶりに阪神・淡路大震災の関連社内イベントを開催。次世代に経験と教訓を伝えた。
2025/02/19
-
阪神・淡路大震災30年「いま」に寄り添う <西宮市>
西宮震災記念碑公園では、犠牲者追悼之碑を前に手を合わせる人たちが続いていた。ときおり吹き付ける風と小雨の合間に青空が顔をのぞかせる寒空であっても、名前の刻まれた銘板を訪ねる人は、途切れることはなかった。
2025/02/19
-
阪神・淡路大震災30年語り継ぐ あの日
阪神・淡路大震災で、神戸市に次ぐ甚大な被害が発生した西宮市。1146人が亡くなり、6386人が負傷。6万棟以上の家屋が倒壊した。現在、兵庫県消防設備保守協会で事務局次長を務める長畑武司氏は、西宮市消防局に務め北夙川消防分署で小隊長として消火活動や救助活動に奔走したひとり。当時の経験と自衛消防組織に求めるものを聞いた。
2025/02/19
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/02/18
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方