資金の確保

大きな課題となるのが事業継続のための資金だ。保険に加入していれば、一定の被害費用については保険が適用されることになるが、入っていない場合は貯金を切り崩すか、融資を受けることになる。すでに中小企業庁では、激甚災害の適用を受け、(1)特別相談窓口の設置、(2)災害復旧貸付の実施、(3)セーフティネット保証4号の適用、(4)既往債務の返済条件緩和等の対応、(5)小規模企業共済災害時貸付の適用、のいわゆる5点セットの支援を打ち出している。
http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/antei/2018/180709saigai.htm

今後、東日本大震災や熊本地震で行われたグループ補助金が適用されるかが注目されるが、こうした国や県、市町村の低利融資、利子補給、補助金などの制度だけでなく、取引銀行に相談することによって全面的なバックアップの約束を得たという事例もあるので、さまざまな機関に相談して情報を収集した上で対応を検討することが大切だ。ただし、融資を受ける際には、当然ながら、将来の返済の局面についても考えておかねばならない。

最も重要なのは従業員の健康

復旧において最も重要になるのが従業員の心身の健康だ。自社の復旧作業に加え、顧客への対応など、従業員には平時とは比べ物にならない負担がのしかかる。家庭も顧みずに会社のために働き続ける場合がある。

2016年の熊本地震で被災しながらも顧客対応にあたったある工務店では、無理にでも全従業員に定期的に休みを取らせるようにしたという。また、別の企業では、全社員を集めて悩みを話し合う機会を設けたり、アンケートなどで社員の不安を聞き取ったという話も聞く。東日本大震災や熊本地震では、被災の大きさから、社員が会社や生活に対する不安を抱き、退社をしたという話も何度か耳にした。その意味でも、トップは社員を不安にさせないように、しっかり方針を示し激励し続けることが重要だ。

最後に、大きな被災から立ち直った企業には、かならずといっていいくらい取引先や同業者の支援がある。支援物資の提供、代替生産、機械設備や工具の提供などさまざまな支援が考えられる。業界全体で被災企業を支えていくことが重要だ。

(了)