Web3.0(ウェブスリー)というキーワードを頻繁に目にするようになってきました。ブロックチェーンを基盤とした分散型のインターネットとして新たに提唱された考え方ですが、なぜ多くの企業が注目しているのでしょうか? 今回から数回に分けて、ある企業を例に、web3.0の概念やこれによりもたらされる新たな機会を紹介していきましょう。
■事例:NFTに注目する企業
準大手ゼネコンの経営企画部門に勤務するAさんは、最近「Web3.0」というワードに注目しています。世界中のIT企業が、異口同音に「Web3.0は、インターネットやデジタル分野における次世代のフロンティアになる」と期待しているからです。Web3.0に伴いさまざまな新しいワードも生まれ、Aさんは中でもNFTに特に注目しなければならないのではないかと思っています。
NFTとは、Non-Fungible Token(非代替性トークン)の略であり、ブロックチェーン上で発行される唯一無二(非代替)のデジタルトークン(証票)のことをいいます。
世界中を見れば、ここ1~2年の間に非常に高額で取引されているNFTの例が散見されるようになっていて、例えば、2021年3月に、米Twitter創業者のジャック・ドーシーが、Twitter上で史上初となるツイートをNFTマーケットに出品し、約3億円で取引されました。その他でも1枚のJPEGの画像が75億円で取引されたり、全米プロバスケ(NBA)の選手のゲーム中のハイライト動画が数千万円で取引されたりしています。
NFTを利用した事業は世界的に拡大しており、日本国内でも吉本興業や楽天、JR西日本など名だたる大企業がNFT事業への参集を決め、盛り上がりを見せています。
Aさんの会社においても、今後の成長が見込まれるNFT事業に参入すべきではないか、といった意見が出始めてきています。しかしながら、NFTに出品されているのはゲームやアート作品といったものがメインで、そのようなコンテンツを多く持つ企業には向いていても、Aさんが勤める建設業には向いていないのではないか、といった声もよく聞かれます。
Aさんは「デジタル分野の今後の益々の発展は理解できるが、建設業にどのように影響してくるのか。製造業同様に“現実のモノ”を作っている我々にはあまり関係ないものなのか。経営企画部として、我が社がWeb3.0やNFTといったものにどう向き合っていけばいいのか」と悩んでいます。
■解説:そもそもweb3.0とは何?
そもそもWeb3.0とは何のことなのでしょうか?
最近ニュースやSNSでよく話題になっている言葉ではありますが、Web3.0の厳密な定義については様々な見解があるようです。非常にざっくりと表すのであれば、Web3.0とは、「GAFAに代表される巨大IT企業が運営するプラットフォームに管理されないインターネット世界」と言えます。そう言われてもいまいちピンとこない場合には、インターネットの歴史を振り返ればわかりやすいかもしれません。
インターネットが普及し始めた1990年代は「Web1.0」と言われ、この頃は「検索して記事を読む」「メールを受信する」といったいわゆる受信のみで完結してしまうといった時代でした。それが現在は「Web2.0」の時代と言われ、SNSに代表されるように「受信だけでなく発信もできる」ことが特徴とされています。そして今後はWeb3.0の時代になると言われているのです。今の時代のインターネットでも十分なのではないかと思われるかもしれませんが、現在のWeb2.0の時代の弊害が問題視されるようになったことで、Web3.0に移行すべきと考えられています。
その弊害というのが、巨大IT企業が運営するプラットフォームが強大な力を持ちすぎているのではないか、ということです。例えばYouTubeに動画を投稿した場合、その管理・運営はGoogleが行っておりますが、管理者の判断で、ある日突然アカウントが凍結されるというようなことがあります。そうなると以降は動画を一切再生できなくなりますが、その判断も言ってみれば管理者(Google)のさじ加減一つです。YouTubeのみならず、TwitterやFacebookといったSNSもすべてその仕組みとなっているため、アカウントそれ自体や投稿内容、情報、あるいは投稿による収入に関することまですべてを大手プラットフォーマーが握ることになります。
昨年、トランプ前米国大統領のTwitterアカウントが突然凍結されたことが話題になりましたが、そういった問題も含め「大手プラットフォーマーに全てを管理されたままでいいのか?」といった問題の解決のために出てきた考え方がWeb3.0なのです。
Web3.0は、言ってみれば運営者や管理者が存在しないインターネットの世界です。「中央集権」的なインターネットから「非中央集権」的インターネットになるといった言葉で表現されることもあります。
ここで、「運営者や管理者が居なくて、どうやってインターネットができるのか?」という疑問が当然わいてくると思いますが、この問題を解決するキーワードが「ブロックチェーン」になります。
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