「できない」ということの2つの理由
事故やミスの原因をつくらない望ましい行動=安全行動を習慣化し、職場に定着させることが、行動科学に基づいた「組織行動セーフティマネジメント」(BBS=Behavior Based Safety)のマネジメント手法です。
したがって、現場マネジャーがまずスタッフ一人ひとりに伝えなければならないのは、安全行動とは何か? そして安全行動の取り方、すなわち「(正しい)作業のやり方」です。とはいえ、自分の部下に対して「懇切丁寧に指導しているのに、仕事をできるようになってくれない」「研修など、スキル習得の機会は十分設けているのに、思うように行動してくれない」という悩みを抱えるマネジャーも多いことでしょう。
仕事のできるスタッフとそうではないスタッフは、何が違うのか?
それを解き明かすためには、まず「仕事ができないスタッフ」の「できない理由」を考えてみるべきです。もちろん、行動にフォーカスしたマネジメントでは、ここで「それはやる気がないから」だとか「性格的に向いていないから」というように内面の問題にはしません。
行動科学マネジメントでは、人が物事を〝できない〟理由は、2つだけだとされています。
ひとつは「『やり方』を知らないから、できない」というもの。そしてもうひとつは、「やり方を知っていても『継続の仕方』を知らないから、できない」というものです。
逆にいえば、この2つさえクリアしていれば、スタッフはみな、安全行動を取ることができるスタッフになれる、ということです。
「知識」と「技術」は分けて教える
「やり方」とは、知識や理論、技術のことであり、何を、どうやって、どんなことをポイントとしてやればいいかという、「スキル」に当たる部分です。言い換えればこれは「どんな行動をすればいいか」「どのように行動すればいいか」を教える、ということです。「機械の操作方法」「接客の手順」などについての正しいやり方を知らなければ、事故やミスが発生するのは当然のことでしょう。
ここでも着目すべきは相手の「行動」です。「どんな姿勢で学ばせるか」「モチベーションをどう上げるか」などは、二の次と考えてください。
スキルを教える際の大きなポイントは、相手に教える内容を「知識」と「技術」に分けることです。
たとえば基本的な作業の手順、ルールやマナー、仕事に必要な道具の種類や使用法などを教えることが「知識」に該当する部分です。そして実際の動作、効率的な作業方法、上手な道具の扱い方、書類の書き方などを教えるのが「技術」を教える、ということになります。
ビジネスの現場では、スポーツなどと違い、知識と技術をはっきりと区分することが難しい場合もあるかもしれません。そんな際は「『知識』は、聞かれたら答えられること」「『技術』は、やろうとすればできること」と考えればいいでしょう。
こうして教える内容を2つに分けて整理しておくことで、スタッフ各人にとって「何が不足しているのか」「知識が不足しているのか、それとも技術が未熟なのか」が見えるようになります。また、相手に順序立てて物事を伝えることや、「どこからどこまで教えればいいのか」の決定が容易になるのです。
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