米国で深刻化するコロナ禍の大量離職
米国ではコロナ禍で「大量離職」が大きな問題になっている。多くの従業員が職場を去ることで、人材を確保することが経営課題にさえなっている。日本でも労働人口が減少する中、リモートワークが常態化し、新たな働き方を求める従業員のニーズに応えられなければ、有能な人材を確保できないというリスクが顕在化しつつある。
転職での理由の多くは、なんといっても、ポジション、給与、福利厚生など、より良い条件が提示されることである。売り手市場へと変化する労働市場では、好条件提示競争が激化することは想像に難くない。もちろん、労働価値に見合った条件を提示することは必要条件であろう。しかし、それだけでは十分とは言えないかもしれない。職場での社会的な環境を整備することも不可欠であろう。それは物理的なオフィスでの仕事が少なくなっている状況でも同じである 。
職場でのハラスメント対策
リアルでもリモートでも職場での社会的な環境整備にとって欠かせないのは、ハラスメントを生じさせないことである。セクハラ、パワハラなど多様なハラスメントは、職場での心理的な安心感を損なうものであり、ある調査によれば、多くの従業員はそうしたハラスメントの現場に遭遇していること、またリモートワークへ移行しても、そうした事態は決して減少するわけではないことも明らかになっている。しかも、ハラスメントが解消されないことで離職する者も決して少なくないという。
ハラスメントは従業員を失うだけでなく、企業のイメージや評判を貶め、顧客への影響や、場合によっては企業業績にも影響を及ぼす。こうしたコストは膨大な金額に上りうることにもなりかねない。またハラスメントが発生しても、それに気づかず、放置することで、さらに状況を悪化することも多い。こうした悪循環を断ち切るためにも、健全な職場風土を醸成することが不可欠となる。ハラスメント研修を実施することで、ハラスメントに対して敏感に反応できるよう、職場風土を改善することが求められる。
激化していくプロセスを知る
ハラスメントを止めるためには、それが最初は差別的な発言、ちょっとしたからかいなどいった、比較的穏やかなもので始まること、そしてそれが放置されると徐々に激化していくといった進展プロセスを辿ることを知ることである。初期段階で気づき、エスカレートする前につぶすことが必要なのである。しかも、こうしたハラスメントは通常、陰湿な形で行われることから、発見できない可能性を秘めている。加えて、ハラスメントを発見できたとしても、それにどのようにして対処することが最も効果的なのか、初期段階でそれを消滅させるための組織的な方法はどのようなものなのかを理解できていることが稀であることも、問題なのである。ここに、教育研修が必要となる理由がある。
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