都市型「建物に留まる対策」を


東日本大震災の際、数百万人の帰宅困難者が一斉に帰宅しようとして、都心部では大渋滞・大混乱となり、緊急車両が全く動けない危険な状況となった。このため内閣府や東京都では地震時の際、都心の事業者には建物・室内の安全性の確保や3日以上の備蓄などにより、一斉帰宅の抑制を求めている。ポイントは事態が収束するまでいかに室内に留まり、被害が発生した場合に自助・共助で乗り切ることができるか。

工学院大学新宿キャンパスは28階建て、高さ143メートルの高層ビル。新宿区や地元事業者と連携して「新宿駅周辺防災対策協議会」を結成し、地震時の対応計画や訓練法を毎年繰り返しており、講習会や訓練会場として提供している。特に新宿駅周辺エリアでの人口密集地域に位置するため、帰宅困難者などの混乱防止や2次災害の抑制が大きな課題となる。

協議会では地震時の行動指針を策定し、高層ビル等に留まるための自助の対策、行き場のない来街者への避難場所への誘導、現地本部を中心とする公共交通や一時滞在施設などの情報提供、多数傷病者が出た場合の共助の対応法など、様々な実践的な対策を推進し、毎年、講習・訓練・検証・改善のサイクルを実施している。目指すのは「逃げない、留まれる建物・エリア」。工学院大学では私立大学研究ブランディング事業(文部科学省)の一環として、様々な対策や訓練を実践できるパッケージツールを開発している。年内にも協議会の公式サイト(http://kouzou.cc.kogakuin.ac.jp/ssa_bousai/index.html)等で公開する予定だ。(了)

インタビューに応えて頂いた工学院大学建築学部・久田嘉章教授