不安定な運営基盤を意識したガバナンス指針
第9回:「スポーツ団体ガバナンスコード<中央競技団体向け>」について3

山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。2006年慶應義塾大学文学部人文社会学科人間関係学系社会学専攻卒業、09年同大学大学院法務研究科法学未修者コース修了、10年弁護士登録、21年公認不正検査士(CFE)認定。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
2022/03/30
スポーツから学ぶガバナンス・コンプライアンス
山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。2006年慶應義塾大学文学部人文社会学科人間関係学系社会学専攻卒業、09年同大学大学院法務研究科法学未修者コース修了、10年弁護士登録、21年公認不正検査士(CFE)認定。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
前回、スポーツ庁より策定・公表されている「スポーツ団体ガバナンスコード<中央競技団体向け>」に関して、そもそも中央競技団体とはどういった組織なのか、その規模等の実態についてご紹介しました。
まず、人的規模(役職員)の観点では、①役員と職員等との人数比に照らすと、意思決定機能と業務遂行機能との関係で、業務遂行機能が脆弱であるのではないか、②役職員における非常勤・非正規の占める割合の大きさに照らすと、意思決定機能においても、業務遂行機能においても、不安定な要素が大きいのではないか、ということが推察され、一部の規模の大きな団体は別として、意思決定においても、業務遂行においても、脆弱性をはらむ人員構成・組織構成になっているということができるかもしれないことをお伝えしました。
次に、収入の観点では、約2割を「補助金・助成金」(=公的資金)に頼っていることから、仮に不祥事等を理由にそれらが打ち切られてしまうと、組織運営・業務遂行に支障を来してしまい、ひいては当該スポーツの振興が滞ってしまうであろうことは想像に難くない財務基盤であることをお伝えしました。
スポーツ振興等の要の役割を担っている中央競技団体に公的資金を投入することは、スポーツ振興にとって有益であり不可欠なのですが、それはあくまで公的資金の源泉たる国民・市民(=社会)によるスポーツへの信頼・応援があってはじめて可能となるものです。
そして、スポーツ団体(この場合は中央競技団体)の適正・適切なガバナンスがなければスポーツ・インテグリティが損なわれてしまい、その帰結として、国民・市民(=社会)によるスポーツへの応援・信頼が失われてしまうという関係にあるのです。
こういった事態を防ぐために「スポーツ団体ガバナンスコード<中央競技団体向け>」が策定・公表されていると理解することができます。
それでは、同ガバナンスコードは、スポーツ・インテグリティを確保するためにどういった定めを設けているのでしょうか。連載第9回となる今回は、これについてご紹介したいと思います。
スポーツから学ぶガバナンス・コンプライアンスの他の記事
おすすめ記事
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/03/05
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/03/04
トヨタが変えた避難所の物資物流ラストワンマイルはこうして解消した!
能登半島地震では、発災直後から国のプッシュ型による物資支援が開始された。しかし、物資が届いても、その仕分け作業や避難所への発送作業で混乱が生じ、被災者に物資が届くまで時間を要した自治体もある。いわゆる「ラストワンマイル問題」である。こうした中、最大震度7を記録した志賀町では、トヨタ自動車の支援により、避難所への物資支援体制が一気に改善された。トヨタ自動車から現場に投入された人材はわずか5人。日頃から工場などで行っている生産活動の効率化の仕組みを取り入れたことで、物資で溢れかえっていた配送拠点が一変した。
2025/02/22
現場対応を起点に従業員の自主性促すBCP
神戸から京都まで、2府1県で主要都市を結ぶ路線バスを運行する阪急バス。阪神・淡路大震災では、兵庫県芦屋市にある芦屋浜営業所で液状化が発生し、建物や車両も被害を受けた。路面状況が悪化している中、迂回しながら神戸市と西宮市を結ぶ路線を6日後の23日から再開。鉄道網が寸断し、地上輸送を担える交通機関はバスだけだった。それから30年を経て、運転手が自立した対応ができるように努めている。
2025/02/20
能登半島地震の対応を振り返る~機能したことは何か、課題はどこにあったのか?~
地震で崩落した山の斜面(2024年1月 穴水町)能登半島地震の発生から1年、被災した自治体では、一連の災害対応の検証作業が始まっている。石川県で災害対応の中核を担った飯田重則危機管理監に、改めて発災当初の判断や組織運営の実態を振り返ってもらった。
2025/02/20
2度の大震災を乗り越えて生まれた防災文化
「ダンロップ」ブランドでタイヤ製造を手がける住友ゴム工業の本社と神戸工場は、兵庫県南部地震で経験のない揺れに襲われた。勤務中だった150人の従業員は全員無事に避難できたが、神戸工場が閉鎖に追い込まれる壊滅的な被害を受けた。30年の節目にあたる今年1月23日、同社は5年ぶりに阪神・淡路大震災の関連社内イベントを開催。次世代に経験と教訓を伝えた。
2025/02/19
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方