第50回:BCM関係者はこれから何に注力しようとしているか
Earth Networks / 2018 State of Business Continuity
合同会社 Office SRC/
代表
田代 邦幸
田代 邦幸
自動車メーカー、半導体製造装置メーカー勤務を経て、2005年より複数のコンサルティングファームにて、事業継続マネジメント(BCM)や災害対策などに関するコンサルティングに従事した後、独立して2020年に合同会社Office SRCを設立。引き続き同分野のコンサルティングに従事する傍ら、The Business Continuity Institute(BCI)日本支部事務局としての活動などを通して、BCMの普及啓発にも積極的に取り組んでいる。一般社団法人レジリエンス協会 組織レジリエンス研究会座長。BCI Approved Instructor。JQA 認定 ISO/IEC27001 審査員。著書『困難な時代でも企業を存続させる!! 「事業継続マネジメント」実践ガイド』(セルバ出版)
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おかげさまで本連載も50回目を迎えることができました。細々とではありますが、このような連載を続けてこられたのも読者の皆様のおかげです。誠にありがとうございます。とはいえ50回目だからといって特に何か記念するわけでもなく、いつもどおり淡々と海外の調査レポートをご紹介したいと思います。
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米国メリーランド州を本拠地として気象情報サービスを提供しているEarth Network社は、2018年2月に「2018 State of Business Continuity」という報告書(以下「本報告書」と略記)を発表した。これは同年1月に、主に事業継続に関する実務者などを対象として同社のブログで呼びかけたアンケート調査の結果をまとめたもので、回答者数は記載されていないが金融業、保険業、ヘルスケア・医薬品メーカーをはじめとして13以上の業種から回答が得られている。この調査は主に「事業継続や災害復旧に関するプロフェッショナルが2018年に注力しようとしている分野(focus areas)は何か?」というような問題意識に基づいて行われている。したがって、タイトルは「State of」となっているが、実態調査というよりは意識調査のような内容となっている。
まず、事業活動に関する最大の脅威は何か?という設問に対して最も多かった回答は「サイバーセキュリティ」(82.5%)であり、本連載で過去に紹介した他の調査結果と同様の結果となった。しかしながら「異常気象による事象」(79.5%)が2位、「自然災害」(61.9%)が3位となっており(注1)、かつ半数以上の回答者が、事業継続計画の中で厳しい気候への対応に関する内容が増えてきていると回答していることなどが紹介されている。
図1は、事業継続のための対策としてどのような投資を検討しているかを尋ねた結果であり、教育及び訓練がトップとなっている。また「産業界でのカンファレンスやイベント」での情報交換やネットワークづくりが2位となっているのも興味深い(注2)。「プロフェッショナルとしての会員資格や認定」が4位に入っているというのは、恐らくBCI(注3)やDRII(注4)、RIMS(注5)のような会員制組織の認知度が高い北米からの回答が多いためであろう。
また図2は、事業継続に関連してどのようなテクノロジーに投資しようとしているかを尋ねた結果である。情報システムのデータ保護や復旧に関する回答が多いが、それらの中で警報や教育のためのシステムの導入が検討されていることは注目に値する。
なお図の掲載は省略させていただくが、「2018年のゴールは何か?」という設問に対して最も多かった回答は「従業員の訓練(training)」(31.8%)だったそうであり、前述の結果と合わせて従業員に対する教育や訓練の必要性に対する問題意識が強調された報告書となっている。日本の実務者の方々がご覧になっても何らかの示唆が得られるのではないだろうか。
■ 報告書本文の入手先(PDF14 ページ/約12MB)
https://www.earthnetworks.com/blog/business-continuity-report-download/
注1) 「自然災害」(Natural Disaster)に何が含まれるのかが本報告書に明記されていないが、一般に「自然災害」と呼ばれるもののうち気象に関連するものは「異常気象による事象」(Extreme Weather Events)に含まれるであろう。
注2) 余談だが「リスク対策.com」主催の「危機管理カンファレンス」や各種セミナーももちろん有意義な投資となりうる。
注3)BCIとはThe Business Continuity Instituteの略で、BCMの普及啓発を推進している国際的な非営利団体。1994年に設立され、英国を本拠地として、世界100カ国以上に8000名以上の会員を擁する。http://www.thebci.org/
注4)DRIIとはDisaster Recovery Institute Internationalの略で、1988年に米国で設立され、100 カ国以上に1万5000人以上の有資格会員を擁する、災害対策やBCMに関する普及啓発を進める非営利団体である。https://drii.org/
注 5) RIMSとはRisk and Insurance Management Societyの略で、北米を中心として世界各国に 9000人以上のリスクマネジメントの専門家および実務家を擁する非営利団体。https://www.rims.org/
(了)
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