ESG(環境、社会、ガバナンス)は企業を評価する新たな基準として定着しつつある。とりわけESG投資は、それまでの財務情報に基づいた投資判断を、こうした新たな3つの視点も含めたものへと広げたという意味で、企業行動の変革を促す契機になりつつある。
ESGを無視することは名声リスクにつながる
投資格付けにおいてもESG情報は充実の一途を辿り、より多くの情報に基づいて、この視点から企業を評価する判断材料を提供している。それに対応して、投資機関のESG投資も着実に増加している。企業にとってはESGを無視することは大きなリスクをもたらす可能性のある要因になっている。しかし、ここに新たなリスク視点が加わる。ESGへの取り組みを明確にすることは必須であり、これに戦略的に対応することは競争力の強化につながりうる機会も提供するが、同時に、表明された取り組みは企業を評価する多様な利害関係者に対する約束でもあることから、この約束を守れないときには企業の評判を落とす名声リスクにもなる。ESGでの約束をしないリスクに、約束を守らないリスクが加わるのである。
ESGに関連して企業に対する要求が高まる中、どのように対応すべきかに悩む企業が大勢を占めると思われるが、こういうときであるからこそ、そうした対応の帰結に関連するリスクにも、今から目を向けるべきであるとRIMSは会員誌で主張する 。
名声リスクは、それ自体は感情に影響を及ぼすもので、企業業績には直接的な影響はないかのように誤解されるかもしれない。しかし、実際にはこうした感情が投資家の意思決定に影響を及ぼし、名声リスクを企業が適切に対処しているかを評価することも含めて、投資判断に影響を与えるといった側面を無視することはできない。つまり、ESG対応には、この意味の価格がついていると考えざるを得ない。ところがESGでの対応はプラスの効果を期待して、ややもすると過大に公表してしまう傾向を持つかもしれない。しかし、その過大さが危険をはらむことになりうる。
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