ワールド ファイアーファイターズ:世界の消防新事情
仲間を称え繋がる証し。チャレンジコイン (Challenge Coin) について
一般社団法人 日本防災教育訓練センター 代表理事/
一般社団法人 日本国際動物救命救急協会 代表理事
サニー カミヤ
サニー カミヤ
元福岡市消防局レスキュー隊小隊長。元国際緊急援助隊。元ニューヨーク州救急隊員。台風下の博多湾で起きた韓国籍貨物船事故で4名を救助し、内閣総理大臣表彰受賞。人命救助者数は1500名を超える。世田谷区防災士会理事。G4S 警備保障会社 セキュリティーコンサルタント、FCR株式会社 鉄道の人的災害対応顧問、株式会社レスキュープラス 上級災害対策指導官。防災コンサルタント、セミナー、講演会など日本全国で活躍中。特定非営利活動法人ジャパンハート国際緊急救援事業顧問、特定非営利活動法人ピースウィンズ合同レスキューチームアドバイザー。
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アメリカの消防士達なら、ほぼ誰でも持っていると言われているチャレンジコイン。チャレンジコインは、帰属意識や士気を向上させるため、隊長や上司から隊員に与えられる直径4センチほどの円形の金属製コインだ。
特に卓越性のある活動をした隊や特別な業績を上げた隊員、または組織にとって名誉な功績など、さまざまな理由で、隊や個人に贈られる。もちろん貨幣通貨ではない。
チャレンジコインのサイズやデザイン、形状、スタイル、色使いはさまざまで、消防以外にも警察、沿岸警備隊、ライフガード、FBI、CIAなどの公的機関も作っている。
使用目的も、消防博物館や消防署などで販売されているお土産等のギフト用から、所属隊員のみに与えられる表彰用や市民による救命表彰用などさまざま。受け取った人の志気を高め、同じ意識を持つ仲間との友情を作り、良い行いへの動機づけをし、相互に刺激し、特別な機会を与えられた記念として活用されている。
ラスベガス市消防局のチャレンジコインには、ラスベガス市を守る決意表明「HONOR(栄誉)、TRUST(信頼)、DUTY(任務)、INTEGRITY(誠実) 」が刻印されており、コインのずっしりとした重さに消防士達の任務への責任と心のぬくもりを感じる。
下記のビデオは、今年2月にテキサス手で発生した大洪水害において、約260名もの家屋などに取り残された住民を救助、及び、避難させた消防団員達にテキサス州知事が感謝と共に表敬訪問する映像。
流儀として握手をする右手にチャレンジコインを隠し持ち、握手をした瞬間に相手の掌中に渡すという一種のサプライズ演出シーンを見ることができる。
Cmr. George P. Bush Presents Challenge Coins to Village Firefighters(出典:Youtube)
ほとんどの消防局では、一般的に各々のロゴや組織章にモットーなどが刻印されているが、レジェンド的な隊長や歴史に残るような功績を上げた個人の名前や階級などが刻印された特別なデザインのチャレンジコインもある。
これら隊長クラスが持つコインは、大隊内で叙勲するまでには至らない程度の功績があった消防隊員や、極親しい友人、消防局を訪問したVIP等に友好の証として手渡されることがある。
センスの良い意匠を凝らしたチャレンジコインの仕上がりの良さと、交換して集めるなどといった男心をくすぐる付加価値もあいまって、チャレンジコインはコレクションアイテムとしての人気が高い。チャレンジコインは敬意の象徴でもある。
消防局によっては、署ごとにチャレンジコインのデザインが違い、異動時には自己紹介すると共に、皆の前で仲間として認められながら、握手をするときに、さり気なく、チャレンジコインの授与式が行われる。
また、消防士の行きつけのバー等では、飲んでいると誰かが突然、「チャレンジコイン!」と声が上がり、コインがテーブルに出される。ほかの消防士たちも後に続いてコインをテーブルに出すというゲームのようなやり取りもある。
そのとき、コインを持ち合わせいない人は全員に酒をおごるルールで、もし、全員持っていたら、「チャレンジコイン!」言い出した人がおごらされるというルール。根底には「いつも繋がっている仲間である」という確認行為にもなっていると思う。
もし、アメリカに行ったときにチャレンジコインをもらったら、それは仲間として認められた証拠。素直に笑顔で受け取る練習もしておこう。アメリカの消防では、日常的にお互いが挨拶代わりに人を褒める。英語のほめ言葉は短いフレーズで、笑顔や驚きの表情と共に表現される。
下記の褒め言葉を日常会話でタイミングよく使いこなせるようになれば、さらに友情が深まるきっかけになると思う。
Very Good!
Nice!
Great!
Amazing!
Fantastic!
Superb!
Brilliant!
Amazing!
Incredible!
Perfect!
Cool!
Awesome!
Wonderful!
なぜ、お互いが明るく褒め合うかというと、同じ使命と目的を持つ仲間であり、災害現場を共にする同士だからである。お互いに尊重し、気分を明るく保つことで任務も積極的に達成することができる。
アメリカではチャレンジコインの用途は広まっており、公的機関で使われる用途以外にも、結婚式や卒業記念、会社の営業コンテストの参加記念、ゴルフのコンペ、大規模プロジェクトの達成記念など、一般的にも普及しつつある。
日本でも、日本製のチャレンジコインをデザインし、各消防局での表彰アイテムにひとつとして取り入れると、特に若い職員の意識を変えるチャンスになるかもしれない。また、消防博物館のお土産コーナーでは人気のアイテムになり、海外出張研修時には交換のチャンスにも恵まれると思う。
■チャレンジコインの様々なデザインと制作価格例 (Challengecoin.com)
https://www.challengecoin.com
「challenge coin fire department」で画像検索すると数千種類のチャレンジコインの画像を見ることができる。
それでは。また。
(了)
一般社団法人 日本防災教育訓練センター
https://irescue.jp
info@irescue.jp
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