2016/11/20
事例から学ぶ

株式会社日立物流では、東日本大震災での燃料不足を教訓に「燃料調達BCP」を策定した。災害時に同社所有のトラックや外注協力会社のトラックが3日間は運行できる燃料を平時から燃料会社に備蓄してもうとらともに、災害時には専属のタンクローリーが同社の要請に応じて各備蓄拠点から燃料を必要とする営業所に向けて出動できる体制を整えている。
編集部注:この記事は「リスク対策.com」本誌2016年1月25日号(Vol.53)掲載の連載を、Web記事として再掲したものです。(2016年11月28日)
東日本大震災で、同社は茨城県日立市などを中心に深刻な燃料不足に直面した。同社安全管理本部リスクマネジメント部の沖山雅彦部長は「震災直後は、トラックなどに給油する燃料の確保が困難な状況に陥り、震災後1~2週間は、当社が調達した燃料を地元の外注協力会社の自家給油所(インタンク)に給油し、共同で利用する場面もありました」と振り返る。ようやく落ち着きが戻ったのは震災から3週間ほどが経った時期だった。

同社では、医薬品や食品など、災害時に途切れさせることが許されない商品も多く扱うことから、震災後、BCPを策定するとともに、燃料調達を確実に行うための「燃料調達BCP」の検討を別途開始し、昨年3月までに体制を固め運用を開始した。内容は、災害時に同社所有のトラックや外注協力会社のトラックが3日間は運行できる燃料を平時から燃料会社に備蓄してもらうとともに、災害時には専属のタンクローリーが同社の要請に応じて各備蓄拠点から燃料を必要とする営業所に向けて出動できる体制を構築するというもの。
具体的なスキームを策定するにあたり最も苦労した点について沖山氏は「備蓄数量をどう見積もればいいかに悩みました」と振り返る。同社は、国内に大小合わせて364の事業所を持つが、すべての事業拠点を対象にするのか、絞り込むとすれば条件はどうするのか、自社の所有するトラック燃料だけを対象にすればいいのか、外注協力会社の車両までを含めるのか、自社で備蓄するのか、燃料会社に委託するのかなど検討すべき項目は多かったという。

事例から学ぶの他の記事
おすすめ記事
-
DXを加速するには正しいブレーキが必要だ
2月1日~3月18日は「サイバーセキュリティ月間」。ここでは、企業に押し寄せているデジタルトランスフォーメーション(DX)の波から、セキュリティーのトレンドを考えます。DX 時代のセキュリティーには何が求められるのか、組織はどう対応していくべきか。マクニカ ネットワークスカンパニー バイスプレジデントの星野喬氏に聞きました。
2025/03/09
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/03/05
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/03/04
-
-
-
トヨタが変えた避難所の物資物流ラストワンマイルはこうして解消した!
能登半島地震では、発災直後から国のプッシュ型による物資支援が開始された。しかし、物資が届いても、その仕分け作業や避難所への発送作業で混乱が生じ、被災者に物資が届くまで時間を要した自治体もある。いわゆる「ラストワンマイル問題」である。こうした中、最大震度7を記録した志賀町では、トヨタ自動車の支援により、避難所への物資支援体制が一気に改善された。トヨタ自動車から現場に投入された人材はわずか5人。日頃から工場などで行っている生産活動の効率化の仕組みを取り入れたことで、物資で溢れかえっていた配送拠点が一変した。
2025/02/22
-
-
現場対応を起点に従業員の自主性促すBCP
神戸から京都まで、2府1県で主要都市を結ぶ路線バスを運行する阪急バス。阪神・淡路大震災では、兵庫県芦屋市にある芦屋浜営業所で液状化が発生し、建物や車両も被害を受けた。路面状況が悪化している中、迂回しながら神戸市と西宮市を結ぶ路線を6日後の23日から再開。鉄道網が寸断し、地上輸送を担える交通機関はバスだけだった。それから30年を経て、運転手が自立した対応ができるように努めている。
2025/02/20
-
能登半島地震の対応を振り返る~機能したことは何か、課題はどこにあったのか?~
地震で崩落した山の斜面(2024年1月 穴水町)能登半島地震の発生から1年、被災した自治体では、一連の災害対応の検証作業が始まっている。石川県で災害対応の中核を担った飯田重則危機管理監に、改めて発災当初の判断や組織運営の実態を振り返ってもらった。
2025/02/20
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方