避難所運営における女性参加の重要性を話す浅野氏

東京都は11日、女性防災人材育成の最初の講座として今年度「防災ウーマンセミナー」を新宿区の都議会議事堂にある都民ホールで開催。約200人が参加した。女性が防災リーダーになる意義や避難所、災害時の食中毒予防、帰宅困難者対策などについて説明。2011年の東日本大震災からちょうど7年の午後2時46分に黙とうも捧げられた。

冒頭、都総務局防災対策担当部長の和田慎一氏が「過去の災害において、避難所の意思決定に女性がかかわることが少なく、着替えや授乳スペース確保などの取り組みがなされなかった。防災においても女性が才能を発揮する、コーディネーターとなる人材を育成したい」とあいさつした。

「減災と男女共同参画 研修推進センター」共同代表の浅野幸子氏が避難所ではトイレなど衛生、防犯やプライバシーの問題があることを説明。これまでの避難所は地域組織の幹部や施設長など、男性になりがちだったが、問題の解決には多様な視点が必要なことから、女性や若者など様々なメンバーで運営を行っていくべきだと指摘。そうすることで女性だけでなく、障害者や子ども、外国人などのマイノリティへの配慮にもつながるとした。またトイレが使えない、家族が帰宅困難者になったなど、実際に災害時に起こりうる状況を記したワークシートを用いて、「どうすればいいのか、どう備えておくべきなのか、当事者意識を持って活動すべき」だとした。

都福祉保健局健康安全研究センター企画調整部食品医薬品情報担当課長の石井健氏は、災害時の食中毒予防について講演。避難生活では食中毒予防のため、手を清潔に保ち、できるだけ早く食べ、食べ物は十分に加熱することが重要と述べた。手洗い・手指消毒が重要で、水が使えない場合はウェットティッシュなどの利用が効果的だと説明。都がダウンロードでも提供する「避難所ですぐに使える食中毒予防ブック」の紹介も行った。

都総務局総合防災部事業調整担当課長の永井利昌氏は、帰宅困難者対策を説明。首都直下地震では都内で517万人の帰宅困難者が出る想定や、地震後に原則3日間は職場や一時滞在施設にとどまる必要があることを説明。理由として、一斉帰宅で被害拡大や二次災害の恐れがあることや、人命救助に重要な72時間の間に帰宅者が道路を塞ぐと、救助に支障をきたすためと述べた。さらに水9Lや9食分の食料、毛布など職場での備蓄や、外出時は住民向けの避難所ではなく一時滞在施設に行き、そこでは水や食料を分け合う助け合いの精神や、運営への積極的な協力が大事なことを述べた。

都の女性防災人材育成事業は2018年度から本格化。基礎編の「防災ウーマンセミナー」と応用編の「防災コーディネーター育成研修会」を実施。どちらも働く女性向けの「職場編」と専業主婦などを対象にした「地域生活編」に分けて実施する。基礎編は年4回程度を予定しており、その職場編では企業などが参加者を集め、その企業へ講師を派遣し実施することも検討している。

また、この日も出席者に配布された「女性版東京防災」こと「東京くらし防災」については、9日に小池百合子知事が記者会見で「追加の発送依頼が相次いでおり、増刷をかけている」と説明。100万部を発行し、1日から配布しているが、都総務局によると在庫が少なくなり、25万部の増刷発注をかけているという。「東京くらし防災」はアマゾンの「Kindle Store」など電子書店からもダウンロードできるほか、同じく1日にリリースされた「東京都防災アプリ」からも読むことができる。

■ニュースリリースはこちら(「東京くらし防災」の電子書店での取扱開始について)
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/03/05/08.html

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「東京都、避難所向け食中毒予防ブック」
http://www.risktaisaku.com/articles/-/3618

(了)

リスク対策.com:斯波 祐介