リスク対策.comが行った地震シミュレーションアンケートの結果から、災害対策のポイントを学ぶシリーズ8回目は、建物の耐震性と代替施設について取り上げます。下記の質問に対して、自社の取り組みがどの程度当てはまるか、ぜひ改めて組織内で考え、現状の対策を見直してみてください。このシリーズが終わる頃には、きっと自分たちの防災やBCPのレベルが向上しているはずです!

【質問12】

ボヤも消火でき、従業員を建物内に入れるかどうか判断しなくてはい
けません。あなたの組織が入る建物は、新耐震基準を満たし、震度6
強程度の揺れでは被災しないと思いますか?

①全くそう思わない
②あまりそう思わない
③半々
④そう思う
⑤強くそう思う

さて、どうでしょう? 回答状況は以下の通り。

 

【質問12】

 

 
 


建物の耐震性に関しては全質問の中で2番目に平均点が高かった項目です。新耐震基準を満たし、震度6強程度の揺れで被災しないと思うかとの問いに39.2%が「強くそう思う」、26.8%が「そう思う」と、全体の7割近くが自信を示しています。

代替施設は決めておらず

一方、施設が使えなくなったことを想定して代替施設を確保していると思うか?との問いに対しては、多くが否定的な回答をしています。

【問24】

午後になり、大きな余震がありました。躯体(くたい)の被害はありませんでしたが、配水管が被災し、当該施設内の複数個所で漏水がしています。あなたの組織では、当該施設が使えなくなる事態を想定し、代替拠点を確保していると思いますか?

①全くそう思わない
②あまりそう思わない
③半々
④そう思う
⑤強くそう思う

さて、どうでしょう? 回答状況は以下の通り。

 

 
兵庫県立大学教授 木村玲欧氏のコメント

真逆の結果が出たように思います。耐震性の高い建物で仕事をしていることは、防災上とても幸せなことです。しかし、停電になったり、上下水道が使えなかったり、電話やネットワークが断絶するなどライフラインの被害が出てしまうと建物は無被害でも業務は継続できません。また、熊本地震のように余震が断続的に起きると、人々は屋内で仕事をすることに恐怖を感じます。そのため、代替施設は建物の被害にかかわらず設定しておく必要があります。なお、コロナ禍で浸透したニューノーマルの考え方を用いて、在宅勤務で業務継続をすることなども代替施設の対策に代わるものとして有効だと思われます。

 

施設が耐震性を十分満たしているなら、代替拠点は必要ない、と思われるかもしれません。そこで、質問では「躯体(くたい)の被害はありませんでしたが、配水管が被災し、当該施設内の複数個所で漏水がしています」とのシナリオで、耐震性に関係なく、代替施設を確保しているかを聞きました。結果としては、平均点が2.44と最も低く、多くの組織が代替施設を用意していないことが明らかになりました。

注目したいのは、耐震性がしっかりしている組織ほど代替施設を用意していないのではなく、その逆だということです。耐震性がしっかりしている組織ほど、代替施設は準備している。逆に耐震性について全く当てはまらないと回答した組織ほど、代替施設も準備していない傾向が顕著に現れました。因果関係までは調べられませんが、おそらく、耐震性がしっかりた施設に入っている組織ほど、BCPの観点から、施設が万が一使えなくなった時を想定し、代替施設を用意していると考えるのが妥当でしょう。

 

耐震性を満たしていても地震後の立ち入り判断が必要

さて、施設が耐震性を満たしていても、地震後は、建物の使用可否を判断する「建物立入判断」を行う必要があります。東日本大震災や熊本地震でも、一旦施設の外へ避難した後に、再び建物に入れるかどうか判断に苦労した話を耳にすることがあります。

こうしたことから、2015年2月に内閣府が「大規模地震発生直後における施設管理者等による建物の緊急点検に係る指針」を発表しました。