2021/05/13
アンケート結果から見直す防災とBCP
リスク対策.comが行った地震シミュレーションアンケートの結果から、災害対策のポイントを学ぶシリーズもいよいよ最終回となりました。14回目の今回は、被災時の資金対策について取り上げます。下記の質問に対して、自社の取り組みがどの程度当てはまるか、ぜひ改めて組織内で考え、現状の対策を見直してみてください。
【質問28】
今回の地震による被災箇所の修復にはかなりの費用がかかることが見込まれます。あなたの組織では、あらかじめ、損害保険の加入など、被災時の資金対策について、しっかり対策を講じてきたと思いますか?
①全くそう思わない
②あまりそう思わない
③半々
④そう思う
⑤強くそう思う
⑥非該当/不明
さて、どうでしょう? 回答状況は以下の通り。
【質問28】
被災時の資金対策は、「リスクファイナンス」などと言われています。
経済産業省リスクファイナンス研究会(2005)『リスクファイナンス研究会報告書』によると、リスクファイナンスとは、「企業が行う事業活動に必然的に付随するリスクについて、これらが顕在化した際の企業経営へのネガティブインパクトを緩和・抑止する財務的手法」と定義されています。お金のことですので、専門家でないと難しいところがあります。火災保険、水災補償特約、地震保険などの各種保険について損害保険会社に確認する、災害時の借入の可能性について金融機関等と事前検討することが重要だと思います。災害融資の制度がある銀行も存在します。
関口訓央(2020)『我が国企業のリスクマネジメントの有効性向上に向けて』(商工金融、2020年9月号)によると、企業の最適なリスクファイナンス戦略として「自己資金」、「銀行借入」、「保険」をベストミックスすることが重要だが、企業への大規模アンケート調査を分析すると、災害による潜在的な損失に対して、多くの企業が保有する自己資金を「過信」しているということが明らかになっています。
BCP策定でここまでの対応は難しいかもしれませんが、災害時に必ず直面する問題です。該当する財務・会計・経理部門に問い合わせたり、もしくは、BCP策定・検証チームの中に、最初からこの部門の人をメンバーとして入れるなど工夫してもよいかと思います。
アンケート結果から見直す防災とBCPの他の記事
- 支払いや復旧にいくら必要になりますか?
- 目標を設定せずにBCPは機能しますか?
- 取引先の連絡先は常に最新になっていますか?
- 電源・通信手段は確保できていますか?
- 災害時の出社・帰宅判断基準を設けていますか?
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/12/24
-
-
-
能登の二重被災が語る日本の災害脆弱性
2024 年、能登半島は二つの大きな災害に見舞われました。この多重被災から見えてくる脆弱性は、国全体の問題が能登という地域で集約的に顕在化したもの。能登の姿は明日の日本の姿にほかなりません。近い将来必ず起きる大規模災害への教訓として、能登で何が起きたのかを、金沢大学准教授の青木賢人氏に聞きました。
2024/12/22
-
製品供給は継続もたった1つの部品が再開を左右危機に備えたリソースの見直し
2022年3月、素材メーカーのADEKAの福島・相馬工場が震度6強の福島県沖地震で製品の生産が停止した。2009年からBCMに取り組んできた同工場にとって、東日本大震災以来の被害。復旧までの期間を左右したのは、たった1つの部品だ。BCPによる備えで製品の供給は滞りなく続けられたが、新たな課題も明らかになった。
2024/12/20
-
企業には社会的不正を発生させる素地がある
2024年も残すところわずか10日。産業界に最大の衝撃を与えたのはトヨタの認証不正だろう。グループ会社のダイハツや日野自動車での不正発覚に続き、後を追うかたちとなった。明治大学商学部専任講師の會澤綾子氏によれば企業不正には3つの特徴があり、その一つである社会的不正が注目されているという。會澤氏に、なぜ企業不正は止まないのかを聞いた。
2024/12/20
-
-
-
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方