リスク対策.comが行った地震シミュレーションアンケートの結果から、災害対策のポイントを学ぶシリーズ12回目は、計画の定期的な見直しと更新について取り上げます。下記の質問に対して、自社の取り組みがどの程度当てはまるか、ぜひ改めて組織内で考え、現状の対策を見直してみてください。このシリーズが終わる頃には、きっと自分たちの防災やBCPのレベルが向上しているはずです!

【質問19】

翌朝になって、取引先からは被災状況について問い合わせが入ってきています。あなたの組織では、平時から主要な取引先のリストを作成し、常に最新の情報に更新できていると思いますか?

①全くそう思わない
②あまりそう思わない
③半々
④そう思う
⑤強くそう思う

さて、どうでしょう? 回答状況は以下の通り。

 

【質問19】

 
 
 
 
 

 

 
兵庫県立大学教授 木村玲欧氏のコメント

 

主要な取引先をリスト化することは、災害時の事業継続計画(BCP)では重要な項目です。なぜなら、取引先が被災して、製品や部品・材料などが調達できないことによって事業がストップすれば、最悪、企業の存続にもかかわるからです。

東日本大震災での企業対応を紹介します。養鶏や畜産事業者向けに飼料を製造販売する中堅企業A社は、震災による被害が小さかったため、得意先の牧場や養鶏場の復旧作業に従業員総出で応援に行ったそうです。ここまでは美談です。しかし、そのうち得意先の家畜飼料の在庫が少なくなりました。そこで会社の担当者が、原材料事業社に発注の問い合わせをしたところ、津波被害で原材料がなくなり、また他から調達しようにも競合飼料メーカーに買い占められていていて、結果的に得意先の家畜は餓死したそうです。「BCPの発想があれば少なくとも初動が違っていたはずだ」「事業継続を脅かす要因の洗い出しが必要だった」とは従業員の後悔です(千葉県産業情報ヘッドライン第498号をもとに要約(千葉県産業振興センター・2014年10月30日発行))。

「災害時に何が起きるのか」を考える時に、会社への被害・影響を明らかにするだけでなく、その次に、事業継続するためには何を優先業務とすべきか、その業務の目標時間はいつかという重要業務分析(BIA: Business Impact Analysis)が重要です。これがないと、目先の業務に忙殺されているうちに、本来は優先度が高かった業務が立ち行かなくなることがあるからです。重要業務分析では、特に「担当者」「納入先・委託先・納品先などの取引先」「扱っている製品・部品・材料・情報・サービス」の3つについて明らかにし、その上で「代替手段はあるか」を、社内の防災訓練などで平時から検討しておきましょう。