2016/09/11
誌面情報 vol48
大規模施設の防災に重要な役割を果たす「自衛消防組織」について、もう一度おさらいしてみよう。解答は東京消防庁予防部自衛消防係の猪狩英清氏、仲三河健一氏。
編集部注:「リスク対策.com」本誌2015年3月25日号(Vol.48)掲載の連載を、Web記事として再掲したものです。(2016年9月11日)
Q1 自衛消防組織って何?
火災や地震などの災害時に、公設の消防隊が来るまでの間、自助の理念に基づき、自らの建物を、自らが守り施設の関係者や利用者の安全を確保するための組織です。2009年6月1日の消防法改正により、一定規模以上の建築物について、建物のオーナーなどの管理権原者は、
◇統括管理者、班長、班員等で構成された自衛消防組織を設置し、火災、地震等の災害が発生した場合の活動を行わせること ◇防災管理者を選任し、防災管理上必要な業務を行わせること ◇防災管理者に防災管理に係る消防計画を作成させ、地震等の災害に備えた避難訓練を年1回以上実施すること ◇防災管理者に防火管理者の行う防火管理上必要な業務を行わせること ◇防災管理点検資格者に防災管理上必要な業務が適正に行われているか、毎年点検を行わせ、消防署に報告すること(特例認定を受けた場合を除く) |
などが義務付けられました。
Q2自衛消防組織はどのような施設・建築物で作らなければいけないの?
消防法により、①11階以上で1万㎡以上②5階建て以上10階建て以下で2万㎡以上③4階以下で5万㎡以上の施設は、自衛消防組織の設置を義務付けられています。地下街は1000㎡以上です。ただし、共同住宅、寄宿舎、倉庫などは除外されます。詳しくは東京消防庁の「主な防火・防災関係義務一覧表」で確認しましょう。
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/lfe/office_adv/kisochishiki/p18.html
Q3「自衛消防の組織」と「自衛消防組織」は何が違うの?
「自衛消防の組織」は、自衛消防組織を作らなければいけないQ2よりも小さい建物などが対象となります。自衛消防組織は統括管理者や班長に資格保有の義務があったり、各班の編成も法令で定められたものを作らなければいけませんが、「自衛消防の組織」では細かい定めはありません。建物の状況に応じて、自由に組織を編成することができます。
Q4自衛消防組織に必要なものは何?
まず、施設のオーナーや管理会社、会社の社長などが管理権原者となり、自衛消防組織を設置します。自衛消防組織にはトップに統括管理者を置き、その下に消火班、通報連絡班、避難誘導班、応急救護班の4つの班を作らなければいけません。例えばほかに安全救護班など、班を増やすことは可能です。1班はおおむね2人以上とされています。また、統括管理者と上記4つの班の班長は、消防庁が定めた機関で「自衛消防業務講習」を受け、効果測定に合格する必要があります。
Q5「自衛消防業務講習」ってどのようなもの?
消防庁の指定する機関や、各市町村の消防局が指定する機関で、2日間にわたって講習を行うものです。例えば東京の場合、1日目は座学で「防火・防災対策の概要」「火災の対応」「地震災害の対応」「テロ災害等の対応」など。2日目は実技が中心で火災報知機や消火器など「消防設備などの取り扱い」「火災シミュレーション」「地震シミュレーション」のほか、パソコンを使用した個別学習があります。
Q6防火管理に関する訓練と防災管理に関する訓練は違うの?
厳密には違います。自衛消防組織の防火管理者は自らが策定した防火管理に係る消防計画に基づき、年に2回以上の火災の発生に伴う消火・避難訓練を、防災管理者は自らが策定した防災管理に係る消防計画に基づき、年に1回の地震の発生に伴う避難訓練を実施することが義務付けられています。ただし、防火管理者と防災管理者は兼務しなければなりません。業務の都合で時間に余裕がない場合などは、地震火災を想定し、2つの訓練を同時に行うことも可能です。
Q7訓練って、何をすればいいの?
一般的には、「火災の初期の段階における消火活動」「消防機関への通報」「在館者が避難する際の誘導」などを指します。迷ったら、最寄りの消防署に相談してみてください。
Q8消防訓練がマンネリ化しているのですが…
最寄りの消防署に相談するのが一番いいでしょう。ただ、これまでの訓練に、目標タイムを設定したり、商業施設であれば来場者に協力してもらうなど、アイデアはいろいろあると思います。職場の皆さんで一度じっくり考えてみてはいかがでしょうか。また、東京には「防災館」という施設があり、実際に煙からの避難を体験したり消火器や屋内消火栓などを使用して、実際に放水して消火体験をすることができます。このような施設を使ってもいいですね。東京では、訓練を実施する際に、消防職員に出向を要請することができ、模擬消火器や煙体験ハウスなどの貸出しも行っています。申込みが多い場合には抽選になりますが、一定以上の人数が集まれば無料で起震車の出向も要請することができるそうです。
東京消防庁からワンポイントアドバイス
2020年の東京オリンピック・パラリンピックの実施を控えて、海外からの観光客が、東京だけでなく日本中 で増加すると予想されています。そのため、今後は商業施設やビルなどの消防・防災活動もグローバル化が求められるでしょう。これからは多言語での避難誘導 や標識の設置などを検討しなくてはいけないですね。 |
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