新型コロナ関連の経営破たん(倒産、弁護士一任や準備中を含む)件数は、昨年9月以降1カ月90~100件超の高い水準で推移。2月に入っては15日時点で78件と、これまでで最多の発生ペースとなっている。倒産集計の対象外となる負債1000万円未満も含め、関連破たんは昨年2月の初確認から約1年で累計1000件を突破した。緊急事態宣言解除が見送られ、外出自粛や時短要請が引き続き売上を圧迫。年度末を控え、息切れ企業の増加で倒産はさらにピッチを上げる可能性が高い。リレーインタビュー第4弾は中小企業の経営環境について。

緊急事態宣言延長の影響
東京商工リサーチ情報本部情報部部長
松永伸也氏

Q.企業倒産の状況をどうみるか?

新型コロナの流行がなければ、2020年の倒産は極めて多くなると予想していた。その比較でいえば、倒産件数は低く抑えられている。しかしこれは、持続化給付金やいわゆるゼロゼロ融資(民間金融機関による実質無利子・無担保融資)といった金融支援策の効果。実態経済を反映したものではない。むしろ、倒産が「先送り」された可能性もある。

資金繰りは確かに楽になっている。だがそれは、当座をしのいでいるだけ。通常の不況ならばそれでもいくらかは売上が入るが、今回は移動制限や時短要請によって売上がほとんど期待できない。飲食店などはまさに干上がっている状態。近いうちに必ず限界が来る。

新型コロナ関連倒産の増加が懸念される(写真:写真AC)

なぜなら、いくら原材料費などの変動費を抑えても人件費や店舗の賃借料などの固定費は出ていく。またゼロゼロ融資などは最大5年間まで元本を据え置くことが認めてられているが、コロナ収束を見込んで据置期間を半年から1年以内に設定している企業が実は多い。その返済期限が5月・6月には確実にやって来る。大方の金融機関は返済条件の変更要請に基本的には応じてくれるだろうが、返せる見込みのあることが前提になる。

Q.コロナがなければ2020年の倒産はもっと多かった、と。それはなぜか?

2008年のリーマン・ショック後、世界的金融危機が中小企業に影響を及ぼすのを防ごうと、日本政府は「中小企業金融円滑化法」を施行。金融機関は借り手から返済猶予などの相談を受けた場合、返済期間の延長や金利の減額などの条件見直しに応じる努力義務を課せられた。この効果で、倒産が激減した。

画像を拡大 リーマン・ショック後の倒産件数の推移

円滑化法は時限立法なので2013年3月に終了したが、金融機関はその後も中小企業の円滑な資金調達を支援するスタンスを維持。つまりリーマン・ショック以降、中小企業の資金繰りは表面的には大幅に改善された。しかし、それが剥落し、実態を映し出しているのが最近の状況だ。

2019年は、経済がだいぶ傷んでいたところに米中貿易摩擦、台風・豪雨災害の多発、さらに消費税引き上げといった要因が重なり、後半から倒産が増加。2020年に入っても暖冬の影響でアパレル関係の不振が続き、倒産は右肩上がりで推移すると予測していた。

Q.皮肉にもコロナ(による資金繰り支援策)によって救われたということか?

そのとおりだが、冒頭で指摘したように、それはあくまで見かけ上の倒産が抑えられているに過ぎない。キャッシュアウトをいくら止めても、キャッシュインがない限り、債務だけが膨らんでいく。

債務超過になると財務状況が悪化し、資本が傷む。そうなると、企業は次の借り入れが難しくなる。そのため政府では、疑似資本といわれるが、いままでの借入金を資本とみなし、そこでまた新たな借り入れを可能とする措置を講じている。まさに至れり尽くせりだ。しかし、それも金融機関とのやり取りの上での話。借入金である点は変わらない。