2021/02/18
アンケート結果から見直す防災とBCP
リスク対策.comが行った地震シミュレーションアンケートの結果から、災害対策のポイントを学ぶシリーズ2回目は救助救命です。下記の質問に対して、自社の取り組みがどの程度当てはまるか、ぜひ改めて組織内で考え、現状の対策を見直してみてください。このシリーズが終わる頃には、きっと自分たちの防災やBCPのレベルが向上しているはずです!
【質問2】
天井がはがれ落ち、数人がケガ、1 人が心肺停止状態になっています。
あなたの組織では、救助救命がしっかりできると思いますか?
下記の1~5の中から、最も該当する番号をお選びください。
①全くそう思わない
②あまりそう思わない
③半々
④そう思う
⑤強くそう思う
さて、どうでしょう?
ちなみに、リスク対策.comが行ったアンケート(有効回答数572)の平均値は3.14でした。質問全体の中では、点数が高い方ではありますが、しっかりできそうもないと考えている組織も多いようです。


救命・応急手当の必要性を感じている人がいることに安心しました。というのも、大災害時には、119番、110番をしてもなかなか救急車やパトカーがやって来ないのです。1995年の阪神・淡路大震災では、生き埋めや、閉じ込められた人で救助隊に助けられたのはわずか1.7%でした。電話が集中してつながらない、消防救急の人員が足りないなど「普段」とは違うのです。人の命に関することでも、できる限り自分たちで対応するという体制を整えておくことが重要ですが、個人の救命講習やAEDの使い方といった能力開発には限界があります。組織として従業員の命を守るための具体的な計画や対応をしっかりと災害対策の中に位置づけておき、施設内の危険個所の把握や、いざというときの救急病院や救護所の確認を是非促進させてください。
東日本大震災では、東京千代田区にあった九段会館の1階大ホールの天井が崩落して2人が死亡、20人以上が重軽傷を負う事故がありました。耐震対策が適切に行われていなかったことなどが厳しく指摘されましたが、地震で天井が落下したり壁が剥がれ落ちたような被災映像は皆さんも見たことがあるかと思います。そのとき、現場にいる人が中心となって、救命活動に当たることができるでしょうかか?
企業によっては、「救命講習」を定期的に社員に受講させているところもあります。救命講習とは、各地の消防局・消防本部が実施している応急処置技能講習のことで、例えば東京消防庁なら「普通救命講習」や「上級救命講習」などコースに応じて、救命技能認定証や上級救命技能認定証などを受けることができます。申し込みは、各企業の地域を管轄する消防署になりますので、興味があれば聞いてみてください。
こうした講習を受けたいと考えている社員の方も多いかもしれません。企業が講習費を負担することで社員の防災意識が飛躍的に高まったという話も聞いたことがあります。
参考までに、東京防災ハンドブック(176~183)と、日本赤十字社が作成している一次救命処置のうち心肺蘇生とAEDの使い方に関する動画を紹介しておきます。
■東京防災ハンドブック
https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/008/074/202004071.pdf
■日本赤十字社 一次救命処置 ~心肺蘇生とAED~
次に、問3、問4についても回答結果を見ていきましょう。
【質問3】
救急車を呼んでも来ません。あなたの組織では、平時から周辺の災害
拠点病院や医療救護所を、分かりやすく従業員に周知していると思い
ますか?
【質問4】
負傷者を安全な場所に移動させる必要があります。あなたの組織では、
あらかじめ施設内の危険箇所などをしっかり調査できていると思いま
すか?
それぞれ、下記の1~5の中から、最も該当する番号をお選びください。
①全くそう思わない
②あまりそう思わない
③半々
④そう思う
⑤強くそう思う
さて、どうでしょう。
アンケート結果から見直す防災とBCPの他の記事
おすすめ記事
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
-
-
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方