首都直下地震「新」想定


首都直下地震の被害対策を検討してきた中央防災会議の首都直下地震対策検討ワーキンググループは2013年12月、30年以内に70%の確率で起きるとされるマグニチュード(M)7級の地震で、最悪の場合、死者が2万3000人、経済被害が約95兆円に上るとの想定を発表した。一方、これまで蓋然性が高い最悪の被害想定とされてきた東京湾北部地震は当面起きる可能が低いとして対象外とされた。被害想定の作成に協力した株式会社三菱総研主席研究員の堤一憲氏に、8年ぶりに見直された首都直下地震の「新」被害想定について解説いただくとともに、同社主任研究員の石井和氏に、企業や自治体に求められる対策改善点について説明していただいた(7月23日、都内で開催した首都直下地震「新」被害想定解説セミナーより)。

関東南部ならどこでも起こる


三菱総合研究所 科学・安全政策研究本部 主席研究員


堤一憲氏

南海トラフ巨大地震の被害想定は最大クラスの被害を算出しましたが、首都直下地震の被害想定に用いた地震はM7クラスです。その理由は、南海トラフ巨大地震は周期性が不確かなので最悪のケースを想定したのに対し、関東南部は過去最大震度の元禄関東地震タイプが2000~3000年間隔、M8クラスの大正関東地震タイプは200~400年間隔で起き、これらの地震の発生確率が現在は非常に低いために、20年に一度ぐらいの高頻度で起きているM7クラスの地震を対象にしました。 

具体的な被害想定を導き出すために選んだのが都心南部直下地震です。注意して欲しいのは関東南部地域ではM7クラスの地震はどこでも起こりえる点です。 

都心南部直下地震は首都中枢に最も影響があると想定されることから、たまたま選んだにすぎません。ですから、次に必ずこの地震が起きるわけではありません。別の地点で地震が起こると、当然、地域よって被害規模が変わります。