2020/12/03
寄稿
新型コロナウイルスの感染が再拡大する中、もしも自然災害が発生したら、どのように対策本部を運営すればいいか悩んでいる組織は少なくないはずだ。通常通り、対策本部を設置すれば三密によりクラスターが発生しかねない。ライフラインが被災しているような状況で、リモートだけで対応にあたれると考えるのも楽観的すぎる。しかし、確実に言えることは、今、どのような災害が起きたにせよ、コロナの感染拡大下での対応にあたらなくてはいけないということ。つまり、複合災害としての対応が求められる。災害対策本部はどう設置すればいいのか、従来、欧米の災害対応の標準的な考えとされてきたICS(インシデント・コマンド・システム)でコロナ対応はどう考えられているのか――。京都大学防災研究所 都市防災計画分野・地域医療BCP連携研究分野教授の牧紀男氏に緊急寄稿いただいた。
都市防災計画分野・地域医療BCP連携研究分野
教授
牧 紀男 氏
専門は、防災計画、災害復興計画、危機管理システム、すまいの災害誌など
1. 関係者が集まって対応することで効果的な対応を可能にする
危機対応とは「新しい現実を効率的に把握し、関係機関間で情報を共有し、統一された状況認識(Common Operational Picture, COP)に基づき適切な意志決定を行うこと」ⅰと定義される。自然災害への対応では大きな部屋に、自治体・消防・自衛隊・医療チームといった危機対応にあたるさまざまな機関の職員が一同に会して対応を行うことで情報共有をスムーズにし、効果的な危機対応の実施を可能にしているⅱ。新型コロナ感染症の対応はコロナ禍という危機に対する対応であり、自然災害の対応と同様、効果的な対応を行う上で関係機関間での情報共有が鍵となる。しかし、感染拡大を防ぐためには大人数が集まることは避けることが望ましいという問題もあり、どのように対応行うのかが課題となる。
大人数が集まる危機対応センター(Emergency Operation Center, EOC)は設置せずにリモートで対応を行っているのか?ということであるが答えは「否」である。
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