【緊急提言】巨大台風迫る!コロナを忘れよ!命を守れ
感染への過剰な心配は無用 早めの避難が多くの命を守る
跡見学園女子大学観光コミュニティ学部/
教授
鍵屋 一
鍵屋 一
1956年秋田県男鹿市生れ。早稲田大学法学部卒業後、板橋区役所入区。防災課長、板橋福祉事務所長、契約管財課長、地域振興課長、福祉部長、危機管理担当部長(兼務)、議会事務局長を経て2015年3月退職。同時に京都大学博士(情報学)。同年4月から跡見学園女子大学観光コミュニティ学部コミュニティデザイン学科教授、法政大学大学院、名古屋大学大学院等の兼任講師を務める。主な有識者会議としては内閣府「避難所の役割に関する検討委員会」座長、「地域で津波に備える地区防災計画策定検討会」委員、「防災スペシャリスト養成企画検討会」委員等。役職として内閣府地域活性化伝道師、(一社)福祉防災コミュニティ協会代表理事、NPO法人東京いのちのポータルサイト副理事長、(一社)マンションライフ継続支援協会副理事長、認定NPO法人災害福祉広域支援ネットワークサンダーバード理事など。著書に『図解よくわかる自治体の防災・危機管理のしくみ』『地域防災力強化宣言』『福祉施設の事業継続計画(BCP)作成ガイド』(編著)『災害発生時における自治体組織と人のマネジメント』(共著)など。
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【緊急提言】
跡見学園女子大学教授/内閣府高齢者等の避難に関するサブワーキング座長 鍵屋一
9月4日正午現在、観測史上最大級の台風10号が九州・沖縄地方に接近している。なんとしてでも一人残らず無事に避難して命を守っていただきたい。だが、そのために新型コロナウィルスが障害になるかもしれない。今はコロナを忘れるときだ。
避難をためらう理由
2018年7月の西日本豪雨災害では304名、昨年の東日本台風では107名、今年の九州を中心とする7月豪雨災害では86名(9月3日日現在、消防庁調べ。いずれも行方不明、関連死を含む)と、高齢者を中心に逃げ遅れによる死者が数多く発生している。
水害は、早く逃げることで確実に助かる。逃げ遅れが原因とすれば、とても残念だ。では、人が避難をためらう理由は何であろうか。調査研究企業のサーベイリサーチが今年6月、823人に聞いた結果は下のグラフのとおりであった。
新型コロナウィルス関連の理由がこれほど上位を占めているのは驚きだ。自宅が安全な人を除けば1位、2位、4位、7位がこれにあたる。
・人が集まると新型コロナウィルス感染症が広がる恐れがあるから
・避難所では安全な空間の確保などの感染症対策が十分にできないから
・共有部分の衛生管理が心配だから
・マスク・消毒用品などの防疫用品の手配が十分にできないから
実際には、多くの自治体は新型コロナウィルス対策臨時交付金を活用して、避難所にパーテーション、段ボールベッド、マスク・消毒用品を大量に購入している。
正常性バイアス
それでは、これらの準備をすれば、住民は安心して避難してくれるだろうか。答えは否だ。これまでの多くの研究では、避難しない主な理由は「正常性バイアス」と言われる人の心理状態だからだ。正常性バイアスは危険が近づいても「自分だけは大丈夫」だと根拠なく思い込む心理だ。
これに加えて、毎日、メディアで新型コロナウィルスの脅威が大量に伝えられると、情報過多となり、必要以上に不安や心配な気持ちを引き起こす可能性が高い。
コロナを忘れよ
まずは、ハザードマップを確認してほしい。家が大丈夫な人はもちろん家にとどまってよい。都市部のマンション高層階などもそうだ。ただ、停電と断水の可能性はあるのでトイレ、水、食料、灯りの確保などは必要だ。
家の浸水リスクが高ければ早めに避難することだ。台風の緊急避難は長くならないので、車避難もいいだろう。ちょっと遠くのホテルや旅館に行くのもよい。この際、マンション住まいの子どもや知人を頼ってもよい。
早めに避難する方が多くなればなるほど、指定避難所となる学校への避難者は少なくなり、結果としてスペースの確保、共有空間の衛生向上、物資の確保などコロナ対策がしやすくなる。
コロナを忘れた早めの避難こそが、みんなの命を守る。
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